見出し画像

小説「龍翔伝」第5話

 俺たちは出来立てのラーメンを勢いよく啜った。

 シオンとアリサ、並んで静かにラーメンを食べている。

そんな中、アリサがボソッと

「神道直人。確か神道家って、日本三大家の一族よね?」

 日本三大家。それは、日本では上位に立つ家柄だ。

 しかし、神道家は公認されたばかりの一族で、本当の日本三大家は『桜鬼家』と『宝条家』そして今は亡き、『天堂家』である。 

 シオンはメンマを頬張りながら、

「霧島平治。霧島財閥の御曹司か…いいところのボンボンね」と吐き捨てる。

「まぁ、貴族様ほど、金持ちじゃあないけどね」と平ちゃん。

 その言葉が気に障ったのか、平ちゃんを睨むシオン。

 状況を察した聖地が、なだめるように平ちゃんの頭を軽くたたき

「平ちゃんは御曹司だけど、家とは縁を切っているんだよね」

 平ちゃんは俺たちと関わることと引き換えに、霧島家を離れたのだ。

 それを聞いたドラグーン人たちは、箸を止め沈黙していた。

ランとレオンだけは、我関せずとズルズル大きな音を立てて麵を啜っている。

「とっしー!! あと、餃子も頂戴」とレオン。

麵を完食したランだったが

「替え玉をお願いします!!」と注文すると、蓮は営業スマイルで、

「かしこまりました!!」と元気よく返事をした。

 実家がラーメン屋だけに、流れるような客さばきだ。

 ランはシオンを元気づけるために、旨味が染み込んでいるであろう、トロトロになったチャーシューを分け与えた。

「シオン。余計なこと言う前に考えて喋ろうね!!」

 シオンは貰ったチャーシューを口に入れると、不服そうな顔で

「はい。今度からは気を付けます……」

 ラーメンを食べ終わった『閃雷のマリア』はおもむろに口を開く。

「明日は、パートナー同士でタイマン式バトルをしてもらう!!」

「まあ、戦ってもいいよ。勝敗は目に見えるけどね」と吐き捨てるシオン。

 シオンはドラグーン人が勝つと確信しているようだが、俺たちは既に気術は体得をしている。

「なんで、戦う必要があるんだ?」

俺は頭を傾げ『閃雷のマリア』に理由を聞いた。

 『閃雷のマリア』はゆっくりと麦酒を口に運びながら

「シオン。実は元龍王族の諸君は気術を使えるのだよ~~」

 ドラグーン人達は一同に驚くが、その中で我関せずとばかりにズルズルと麵を啜っているラン。

 そんな中、シルフィが重い口を開く。

「気術はこの学校で習い、体得するものではないの?」

 『閃雷のマリア』はなにか言いたげな顔で、

「あなた達は自分のクラスナンバーは覚えている?」

 直人は人差し指でこめかみをつつきながら、

「確か… 一年特組だっけ?」

『閃雷のマリア』は顔をほころばせ、

「そう、通称『特別優等生組』!!」

 賑やかな食事は終わり、満足したレオンは、

「蓮君、ラーメンはとっしーだったよ!!」

 俺は先ほどから、レオンの『とっしー』発言に関して、

「なあ、とっしーてなに?」と質問すると、

 ランは満面の笑みをたたえ、

「それはね。“とても素晴らしい”という愛情表現の言葉だよ!!」と答えた。

「ふ~ん」

 

 俺とランは仲良くなれそうな気がしていたが、明日は彼女とのバトル。

正直、気が進まないが負けるわけにはいかない。

 翌日を迎え、ランたちとのタイマン式が開幕する。

先鋒・白蘭蓮対シルフィ・マックロード

二番手・神道直人対アリサ・オーバー

中堅・霧島平治対レオン・ハート

副将・赤髪聖地対シオン・マグナ

大将・桜鬼龍翔対ラン・フランスケア

舞台は東の校舎。先鋒のバトルが開始した!!

大きな布で巻かれた獲物を蓮は片手で軽く持ち上げる。

眠たそうにしていたシルフィだったが、腕時計型デバイスを起動させ

「ドラグナー起動、戦闘タイプ『フェアリー』!!」と叫んだ。

 シルフィの幼い背中には大きな羽が生える。その光景は妖精のようで美しい。

 蓮は口笛を吹いて、

「じゃあ、僕の見せるね」

 蓮は獲物にかかった布を勢いよく剝がした。中身は昔の中国『北宋』で使われた武器『方天戟』だ!! 

方天戟は、左右対称の『月牙』と呼ばれる三日月状の刃が付いている槍で、その大きさは二メートルを超える。蓮は百五十六センチの小兵でありながら、それを軽く片手で持ち上げた。

 『閃雷のマリア』は指揮を取る。

「いざ、尋常に……始め!!」

 蓮とシルフィはお互いが後方に退く!! 警戒した二人は間合いとり睨み合う。

蓮は方天戟を両手で構え、緊迫した空気の中で大きく息を吐く。

シルフィは目を閉じ、小声で何かを唱えながら両腕を交差する。

 しばし睨み合い続いた後……蓮が仕掛けた!!

 蓮は方天戟を高く持ち上げ振り下ろすが、シルフィは回避。

 直後、シルフィは背中の羽から光を放った!! 蓮は驚き上空へ飛び上がる。その勢いを利用して方天戟の末端を右腕だけの力で持ち上げ、シルフィの頭に振り下ろす。衝撃で舞い上がった砂煙が二人を包み、一瞬の静寂。

長い戦いになるかと思われたが、早くも勝敗が決まったか!?

砂煙が消えるとシルフィが姿を現した。

シルフィは羽を広げ纏い、頭部を防御する。

蓮はフッと笑みを浮かべ、バックステップで距離をとる。

「今のを防ぐとは興味深いな。ドラグナーというものは」

「いい一撃だったけど、残念ね。その実力では自慢の羽は壊せないわ……」

 頑丈な羽だが、蓮の本気はここからだ。まだ本当の豪力は出してはいない!!

 蓮は先ほどの「光」が気になり、シルフィに尋ねる。

「さっきのは、普通のレーザーではないよね?」

シルフィは、ふーんと頷き、

「正解。あれは、破壊光線よ」と答えた。

 ドラグナーの戦闘タイプ『フェアリー』なのに、穏やかな攻撃ではないな……

とはいえ、蓮の気術と相性がいいことを俺は知っている。

「フフッ。どうやら、固有気術を披露しないといけないね!!」

蓮は不敵な笑みで言い放った。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?