20221226_DIALECTを遊んでくれ

「火星では大気も水も有限だから、そもそも音による会話はしないかも。市民は手話がメインになるんじゃないか?」
「配給が多い日は貰ったもので手が一杯になるから、市民の不平不満(手話)が聞こえなくなるってことで、祝祭は『沈黙の日』って呼ばない?」
言語は風土と習慣から生まれる。言葉は話し手と時代によって変化していく。言語とは…、それは”DIALECT”で語られる。

と、書いたもののDIALECTでプレイされる題材は言語学的に言語なのかは分からない。ただ、そこにはプレイヤーが共感するものがあり、共通理解があり、それを運用する規則がある。
DIALECTは所謂ナラティブ系TRPGに分類されるのだろうか。TRPGといえばCoC、D&Dくらいにしか思っていない俺にはこのゲームを分類することが難しいが、そんなことを置いておいても楽しいということだけは分かる。何を隠そう、数あるTRPGとボードゲームの中で俺が最も面白いと思っているのがこのDIALECTである。

DIALECTは”言語についての、それがどのように死ぬのかについてのゲーム”と題されるように、常に滅びについて考える必要がある。自分が属するコミュニティがどのようにして失われていくのかを、言葉を通して理解していくゲームといえば分かりやすいだろうか。例えば、かつて下ネタで会話していた小学校時代の友人達と、中学生になって話題が切り替わった瞬間に話し難くなった。インターネットコミュニティのスラングが、時間の経過によって徐々に死語になっていった。これらは全てDIALECTの題材である。
DIALECTではこの題材を〔バックドロップ〕と呼び、所謂シナリオのような役割を果たす。〔バックドロップ〕に従って全てのコミュニティは失われていく。俺はそれを悲しいと思いつつも、滅びの側に毎回新たな芽吹きがあることを希望にも思っている。誰からも忘れられてしまった言葉を、我々プレイヤーは覚えていることができる。それがたまらなく愛おしいのだ。

というレビューもそこそこに、俺が公式に掲載してもらった〔バックドロップ〕について少しだけ覚え書きというか、解説文というか、個人的なメモのようなものを残しておこうと思う。

『好奇心は猫をも殺す』

このバックドロップは俺の科学者としてのバックグラウンドそのもので、これといって元ネタにしたものはない。多くの映画やアニメでマッドサイエンティストはその倫理を逸脱してしまう。この〔バックドロップ〕では、そんなマッドサイエンティストになりきって欲しいと思っている。だって、好奇心に従ったほうが面白いから。情熱的で偉大な発想を打ち捨ててきたのは、いつだって理性的で凡庸な常識なんだ。

『帝都の街角』

このバックドロップは、「イヴの時間」と「ヘテロゲニアリンギスティコ」と「ホビット」と「ふらいんぐうぃっち」とその他色々を題材にした。帝都という言葉には不思議な魅力があると思う。首都とも都市とも都会とも違って、何処となく異世界のような、ファンタジーめいた、きらびやかで大正浪漫なイメージがある。俺はそんな”帝都”が好きで、そこに住んでいる人々はどんなだろうと夢想した。きっとそこに住んでいるのは活き活きとした住民…だけではないはずだ。街角の喫茶店に居座る変人や、場末のバーにたむろしている荒くれ者、魔女のカフェに集う人ならざる者、そんな異世界の一風変わった日常風景はとても魅力的だ。

この他にもいくつか〔バックドロップ〕を書いたし、書くネタも溜まっているけれど、兎にも角にも俺はDIALECTで遊びたい。この日記を読んで少しでも興味を持ってくれたのなら、一緒に言語を滅ぼそう。


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