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闘病記⑤主治医との別れ

TURBT後の父の膀胱癌(pT1, G2>G3)の治療方針が、主治医とセカンドオピニオンとで別れたため、10/28に主治医に今後についての相談をしに行きました。

主治医の見解は、すぐにBCG膀注(8セット)。
一方、セカンドオピニオンは、もう一度TURBTをやった後に(筋層浸潤が見られなければ)BCGという方針でした。

診察室に入ると、主治医が開口一番言いました。「2回目のTURBTですが、11/13の枠にキャンセルが出たので、予約をそちらに移しておきました。早い方が良いので、そこでやりましょう。こちらの同意書にサインをお願いします。あと、今日はこの後、手術に必要な血液検査等をやっていただきます。」

私「あ、いや、でも…先生は元々2回目は必要ないと判断されていたのですよね?そう判断されたのには、それなりの理由があるのだと思いますので、それを伺いたかったのですが」

主治医「私が2回目をやらないで良いと判断したのは、1回目で癌細胞を全て取り切れたと思っているためです。患部はもちろん、その周囲も広く削りました。BNIという方法で、腫瘍を見やすくした上で行ったので、見落としもないと考えています。」

私「でも、セカンドオピニオンの先生は、前回のTURBTで筋層が取れていたかどうかは、病理検査の結果を見る限りでは分からない、とおっしゃっていましたが…」

主治医「いえいえ。筋層もしっかり取った上で、浸潤がないことを確認しています。
それに、今回のようなケースで2回目をやることは、全国でも殆どないと思います。病院の手術枠にも限りがあるからです。全員に2回目のTURBTをやっていたら、手術枠がいくらあっても足りなくなってしまいます。
ただ、セカンドオピニオンであのように言われた以上、2回目をやらないのは患者さんとしては不安だろうと思ったので、今回は2回目をやろうと思っています。」

この日、主治医に会うまでに何度も家族会議を行い、我々の見解はほぼ固まっていました。主治医には、転院のお願いをしに行ったのです。

セカンドオピニオンの医師は知る人ぞ知る名医でした。ただ、そんな肩書きよりも、私や母が提案したものの主治医に断られてきた治療方法を、「やった方が良かったのにね」と言ってくださったことが、転院を決意させました。私は「この先生になら、父を安心して託せる」と感じたし、父もそれに同意してくれました。

父「先生、私には同じ膀胱癌になった友人がいるんですが、彼はABC病院で膀胱温存療法をやって、今も元気に過ごしているんです。彼はね、あの治療をやってよかったなぁ、と言っているんです」

主治医「そうですか。私は膀胱温存療法はやったことがないですが、お望みとあればトライすることも可能ですよ」

お父さん…転院したい意思が先生に伝わってなくて、むしろ話が変な方に行き始めているよ…。

私は言いました。「先生、最後に決断するのはもちろん父ですが、私個人は、単刀直入に申しまして、転院させていただきたいと考えています。」

主治医「…」

私「可能性は低いですが、2回目をやって筋層浸潤が見つかれば、ガイドライン上は膀胱全摘除になる理解です。こちらでは基本的には、筋層浸潤になれば膀胱を取ることを勧めますよね?」

主治医「まあ、そうでしょうね。」

私「でも、父は膀胱温存を望んでいて、セカンドオピニオンの先生がおられる病院は膀胱温存療法も得意としています。実際、父に万が一、筋層浸潤が見つかったとしても、膀胱温存療法を適用できるだろうと言われました。
2回目のTURBTをこちらでお願いしたとしても、筋層浸潤が見つかれば、どの道セカンドオピニオンの病院に転院することになると思うのです。その場合、先方はここで治療がどのように行われたのかの詳細は知り得ないので、また同じ検査やTURBTをやることになる可能性が出てくると感じています。
そういうリスクがあるのであれば、今のうちから転院し、2回目のTURBTは先方でやっていただくのが良いと判断しました。
先生にはこれからずっとお世話になりたいと思っていたので、このようなことになり本当に心苦しいし、残念なのですが、私はそのように思っています。」

父「こちらの方が近所ですし、先生にずっとお世話になろうと思っていたのですが、申し訳ありません…。」
母「申し訳ありません…。」

先生「そうですか…。お考えは理解できます。むしろ、そう思わせてしまい、僕の方が申し訳ありませんでした。転院ということであれば、手術はキャンセルします。」主治医は先ほどまでの強気な態度とは打って変わって、明らかに意気消沈しており、私も申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

私「今までお世話になり、本当にありがとうございました。うちも近所なので、またこちらにかからせていただくこともあるかと思います。その際はどうぞよろしくお願いします。」

先生「はい、またいつでも来てください。」

こうやって、父の転院は決まりました。
そして実は、この時には、既にセカンドオピニオンの先生に転院する予定である旨を説明し、11/30に仮予約を取ってありました。

最後は笑顔で我々を送り出してくれた主治医には、心から感謝しています。

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