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「LUMIX S9 に触れて感じたことは、そういうことじゃないんだよ」って話。

はじめに

ども、リリカルフォトグラファーのミツハシです。
『5月下旬に新商品の発表がある』とのリーク情報が流れてから LUMIX ユーザーの注目を集めた S9 。
LUMIX の公式リリースと同時にカメラ系ユーチューバーの先行レビューも公開され、その機能とデザインで賛否両論となったモデルというここ最近の LUMIX機では見られない注目のされ方をされていたのが印象的でした。
で、LUMIX BASE TOKYO(以下 LBT )なら実機を触れるかなぁと思い、5月25日に LBT へ伺い実際に触れて広報の方とお話して感じた S9 について書いていこうと思います。
今回の記事を書くにあたって、YouTube のレビュー動画や note のレビュー記事をあえて見ないと決めました。
書きたいのは実機に触れた時のインスピレーションなので、余計なノイズが
混ざらないようにしたかったというのが、その理由です。

LUMIX DC-G9 / LEICA DG SUMMILUX 25mm f1.4 Ⅱ ASPH.

LUMIX S9 というカメラ

LBT で初めて S9 を触った第一印象は「小型軽量」でした。
フルフレーム機の小型軽量モデルとして SIGMA fp(fpL)がありますが、fp より軽いと感じました。
また、ファインダーレスというの思い切ったデザインと LUMIX S 26mm / f8 のパンケーキレンズとの組み合わせは、写ルンですを想起させました。
実際、この組み合わせで撮影してみると、背面モニターを見ながらマニュアルフォーカスでピントを合わせてシャッターを切るという行為が、思ったほど苦ではありませんでした。
コンパクトなボディとパンケーキレンズの組み合わせは、バッグやポケットに収められるでしょうし、このカメラは「カメラのある日常」を提供することをコンセプトにしているのでは、と感じました。
使い方のイメージとしては、写ルンですと同様にきっちり撮影するというよりも、「撮りたい」と思った時に何も考えずにシャッターを切るスタイルが一番しっくりくると感じました。
あくまで S9 を日常使いのカメラという位置づけで考えると、小型軽量化のためにファインダーとメカシャッターをオミットしたり、そのサイズ故に廃熱処理が従来モデルより難しいため動画の連続撮影時間も極端に短くなってますが、これも昨今の tiktok やYouTubeショート動画に代表されるように1分以内の短尺動画が主流になっているので、もとよりそういったユーザーを狙っているのでしょう。
S9 というカメラは、本格的な動画撮影や写真撮影をしたいユーザーに向けたカメラではなく、肩の力を抜いて日常の何気ないシーンを切り取るような、スマホの様に気軽に持ち運べてカメラでの撮影体験を提供するフルフレーム機なんだと思いました。

LUMIX DC-G9 / LEICA DG SUMMILUX 25mm f1.4 Ⅱ ASPH.

LUMIX S9 と幸せになるために

LUMIX S9 というカメラは、「日常使いのカメラ」というこれまでの LUMIX にない新機軸のモデルだと思うんです。
そこを把握していないと、S9 というカメラにネガティブなイメージしか思いつかないでしょうし、事実そうした発言をされている方々は経験豊かな「カメラ沼の住人」だと思います。
そうした誤解から購入後に不幸な出来事を回避するためにも、S9 を購入して幸せになる人・不幸になる人を考えていこうと思います。

LUMIX DC-G9 / LEICA DG SUMMILUX 25mm f1.4 Ⅱ ASPH.

本格的に動画・写真撮影をしたい人

これは前述したように、動画の連続撮影時間が非常に短いため長尺の動画が求められる撮影に不向きなこと、小型軽量モデル故に大口径単焦点レンズの装着は取り回しを考えるとレンズの選択がかなり狭まれるからです。
S9 を使う時に幸せになるレンズは、LUMIX S 26mm / f8 が筆頭候補でしょうし、SIGMA I シリーズも良いと思います。
また、小型のオールドレンズでの撮影も面白いでしょう。
「本格的」ではなく、もっと気軽に日常の中に撮影行為を溶け込ませるというのが、S9 というカメラの立ち位置だと思うんです。

「S9 =エントリーモデル」だと思っている人

これは S9 をエントリーモデルとして紹介している記事や動画のタイトルをチラ見したので言いますが、S9 はスマホカメラを日常的に使う方の「最初のカメラ」として最適だとは思いますが、エントリーモデルという位置づけではないと思います。
それはこの記事で再三お話ししているように、このカメラは LUMIX が新機軸として打ち出したカメラであり、初心者が手の出しやすい価格とデザインではあるものの、歴の長い方々にとってはシンプルに撮影する楽しさを思い出させてくれるカメラでもあるからです。
実際に私も実機で撮影して楽しかったです。
被写体をフレームに納めてピントを合わせ、シャッターを切る。
写真を撮るという行為は本来こういうものだったと、改めて再認識させてくれるカメラが S9 というカメラでした。

カメラ好きカメラマン

カメラマンと一言で言っても、カメラが好きな方と撮影行為が好きなカメラマンが存在します。
S9 は既存のミラーレス一眼カメラとはデザインも構造も異なるだけでなく、カメラ好きカメラマンの琴線に触れる機能はほぼオミットされているため、購入されても幸せにはなれないと思います。
むしろ、カメラ好きカメラマンの皆様が S9 にネガティブな発信をされているのかもしれないとすら思っています。
まぁ、ポルシェやメルセデスベンツを乗られている方が、日常使いに最適な軽自動車を絶賛するとは考えにくいですよね……。

LUMIX DC-G9 / LEICA DG SUMMILUX 25mm f1.4 Ⅱ ASPH.

まとめ

LUMIX S9 という新しいコンセプトを打ち出し、「日常使いに最適なカメラ」という新機軸のカメラが、ここまで良くも悪くも話題になるとは Panasonic でも考えていなかったと思います。
それは多くのレビュアーが既存のカメラユーザーであり、S9 というカメラがどういった体験をもたらしてくれるのかという点よりも、機能面での評価に終始していたことが原因なのではないでしょうか。

また、LUMIX S5Ⅱの発売後に同じ筐体で G9PROⅡが発売されたことを受けて、S9 のマイクロフォーサーズ版を期待する方々がいらっしゃるようですが、個人的には「ない」と考えています。
というのも、以前も記事に書いたように開発スタートは G9PROⅡが先で、そこに相乗りする形で S5Ⅱが開発されたという経緯を LUMIX の広報さんから聞いていることと、マイクロフォーサーズ機は G100D をやっとこさ発売したくらいなのに、少ない開発リソースを割いてまでマイクロフォーサーズ版 S9 を開発するなら新型センサー搭載の GH7 を優先してほしいという願望込みの見解です。

実際に使ってみて面白いと感じたのは間違いないですし、通勤通学のカバンにしのばせたり何でもない風景を切り取ったり「カメラのある日常」というシーンがスッと頭に思い描けたカメラでした。
「所有欲を満たす」とか「作品づくりの道具」ではなく、いつも飲む一杯のコーヒーみたいな存在、それが LUMIX S9 というカメラなんだと思います。
機会があったら是非、実機に触れてみてください。
その時のインスピレーションが、あなたにとっての LUMIX S9 の存在意義ですから。

LUMIX DC-G9 / LEICA DG SUMMILUX 25mm f1.4 Ⅱ ASPH.

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