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コントラストAFは悪くない。


ども、ミツハシです。
そろそろ機材系のお話から離れて、撮影に臨むときにどんなことを考えているのかっていう記事を書こうかと思ったんですが、やっぱり誤解されていることがどうしても気なってしまったので、今回もカメラのお話です。
カメラというか、カメラの内部でも重要なAF(オートフォーカス)に関するお話です。
現在のデジタルカメラは像面位相差方式とコントラスト方式の2種類が採用されています。
そして我らがLUMIXでは、長年コントラスト方式とDFDを組み合わせたAF方式を採用されていましたが、S5Ⅱからこれに像面位相差方式も採用されました。
LUMIX以外のメーカーでは、TTL位相差方式もしくは像面位相差方式が採用されてきましたが、実は像面位相差方式のみでAF駆動させているのはCanonだけで、Nikon(Zシリーズ)・Sony・OMDS・富士フイルムでは像面位相差方式とコントラスト方式のハイブリッドAFとなっています。
ちなみにPENTAXとNikonのDシリーズはTTL位相差方式が採用されています。
LUMIX機のカメラレビュー(という名のインプレッション)動画は皆様もご覧になったことがあると思いますが、どのカメラ系ユーチューバーも口をそろえて「コントラスト(AF)は遅い」と言っていると思います。
事実、遅いし像面位相差方式の速いですが、これはコントラストAFの性質上、仕方のないことなのです。
そして、カメラ系ユーチューバーが「爆速AF」と称賛する機種にもコントラストAFが搭載されていることにはまったく触れず、「像面位相差(AF)は速い」と言うわけです。
ということで、コントラストAFがなぜ遅いのか、像面位相差AFになぜコントラストAFを組み合わせるのか、この辺のお話をしていきたいと思います。

いい加減、カメラ系ユーチューバーの皆様には正しく伝えるための話術とカメラ知識を身に付けて欲しいものです……。

LUMIX DC-G9PRO / LEICA DG SUMMILUX 15mm f1.4ⅡASPH.

コントラストAF方式とは?

コントラスト方式とは、ピントの合掌点のコントラストが一番高くなることを利用して、撮像センサーの画像をからコントラストの高い部分を読み取り、そこにフォーカスを合わせる仕組みです。
つまり、画像全体からフォーカスポイントを探すことになるので、何度もフォーカスが前後に動いたりもします。
これはコントラストAFが撮像面から被写体までの距離からフォーカスポイントを探るのではなく、フォーカスポイントにピントが合っているかいないかだけを検出するためです。
ですが、非常に細かくフォーカスポイントを探れるため精度は位相差方式に比べて高いのが、コントラストAFの最大の長所といえます。

LUMIX DC-G9PRO / LEICA DG SUMMILUX 25mm f1.4ⅡASPH.

位相差AF方式とは?

位相差AF方式とは、コントラストAFとは違い測距センサーで距離を測り、そこからピントのズレている方向と量から、ピント面を演算から割り出す仕組みです。
像面位相差方式と違い、位相差方式ではTTL方式( Through The Lens :レンズを通ってきた光をカメラボディ内のセンサーで測る方式)のセンサーユニットをボディに組み込む必要があるので、一眼レフ機にしか搭載されていません。
そして、昨今の主流である像面位相差方式とはイメージセンサーにAF素子を埋め込み、前ピン・後ピンで生じる光のズレを読み取りピント面を算出します。
位相差方式はセンサーユニットを組み込む必要があり、フォーカスエリアは中央部に限定されるのものの、合掌速度は速いのが特徴です。
これに対し像面位相差方式はフォーカスアリアが位相差方式より広くセンサーユニットが必要無いためボディの小型化が可能になったことがメリットで挙げられますが、イメージセンサーにAF素子を埋め込む(=画像信号を出力しない素子)ため、いわゆる「穴の開いたフイルム状態」となり、画質劣化の可能性があったり、センサーの小型化による暗所でのAFが弱くなる傾向があるとされています。
また、AF速度だけで比較すると像面位相差方式より位相差方式の方が速いとされています。

LUMIX DC-G9PRO / LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm f2.8 ASPH.

カメラメーカー各社のAF方式

LUMIX(Panasonic)

LUMIXは撮像面に穴あき状態となる像面位相差方式での画質劣化を嫌い、一貫してコントラスト方式を採用し続けていました。
そしてコントラスト方式を補完する形でDFD( Depth From Defocus )も併用する「空間認識AF」と命名されました。
DFDとは前ピン・後ピンから逆算して被写界深度を算出する仕組みで、DFDで算出された被写界深度内をコントラストAFの検出範囲とすることで、コントラスト方式の合掌速度の遅さの軽減を図ったと思われます。
とは言え、進化していく像面位相差方式の合掌速度にはかなわず、「LUMIXはコントラストAFだから遅い」と評価され、S5Ⅱからは像面位相差方式も採用する形でAF速度の向上を図りました。

LUMIX DC-G9PRO / LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm f2.8 ASPH.

Sony・Nikon(Zシリーズ)・富士フイルム・SIGMA

4社とも像面位相差AFを補完する形でコントラストAFを使っていますが、ピント面が撮像面の中心から外れた位置にある場合、コントラスト方式が優先されることもあるそうです。
4社の中ではSonyのAF速度が群を抜いている印象ですが、センサーの精度というよりプロセッサの処理能力が起因していると思います。
Sonyだけが唯一、グループ内でパソコンを製造しているという点からも、プロセッサの違いと考えられます。

Canon

Canonも像面位相差方式を採用していますが、唯一コントラスト方式を併用していません。
それはCanonの独自技術である「デュアルピクセルCMOS AF」によるもので、イメージセンサー上の撮像素子が位相差AFセンサーを兼ねるCMOSセンサーを使い像面位相差方式の「穴あき状態」と位相差方式より遅いとされていたAF速度の向上につながりました。
また、全画面でAFセンサーが機能するため動体撮影だけでなく、動画撮影でもAF性能の向上が可能となりました。

PENTAX・Nikon(Dシリーズ)

どちらも一眼レフカメラであり、どちらも位相差AF方式を採用しています。
位相差方式の弱点である画面中央外のピント合わせができないものの、中央でのピント合わせではかなり高速でのピント合掌が可能とされています。
今後、位相差方式を搭載したカメラはPENTAX機のみとなるでしょうけど、一眼レフ機と合わせて位相差方式と像面位相差方式の違いも体験されることをお勧めします。

LUMIX DC-G99 / LEICA DG SUMMILUX 15mm f1.7 ASPH.

LUMIX機のAFインプレッション

私が使っているカメラはLUMIXのG9PROとG99で、どちらも空間認識AF方式となっています。
実際に使ってAF速度の遅さを感じたことは、ほとんどありませんでした。
コントラスト方式の特徴として、電源を入れてしばらくするとコントラストAFが機能し始めて、ジワーっと画面がクリアになっていきます。
それからシャッター半押しするとラグを感じることなくピントが合掌しますが、電源を入れてすぐにシャッター半押しするとピントが合わないと思われます。
実用レベルでは全く問題ないAF速度ですしピント精度は文句なしですので、動体撮影や起動後すぐ撮影するケースがない私にとって、AF速度より精度の方が重要ですのでG9PRO・G99ともに今後も使い続けようと思っています。

LUMIX DC-G99 / LEICA DG SUMMILUX 15mm f1.7 ASPH.

おわりに

カメラ系ユーチューバーのレビューは、あくまでも本人の印象で語っていることが多いので、「LUMIXはAFが遅い」と言うのもあくまで他社カメラと比較した印象でしかありません。
そもそも、実用に困るレベルのAF速度のカメラをPanasonicが発売することがあるのかを考えてみてください。
ですので、カメラボディの話をした時にも書いた様にまずは実機に触れて、ご自身の感触を信じてください。
同じ方式のAFでも、アルゴリズムやプロセッサ性能によりAF速度と精度は変わりますし、人によって速度の感じ方も変わります。
特にAF性能は撮影体験に大きく影響しますので、カメラを購入する際には是非とも実際に触れる機会を作ってください。

今後の創作活動をより良いものにするために、皆様からのご支援をお待ちしております。