7/12

 朝の支度が奇跡的に早く済んで、出かけるまで15分ほど余った。TVを消し、暑くなる前に少しでも早く、とも思ったが自転車を漕ぐうちにどうせ汗をかくからと、ちょうど頼まれていた学年通信に載せるもののために、葛西善蔵を読み直して時間を潰した。
 やるべきことは午前中にほとんど済んでいて、それでこれまで名前でしか知らなかった「おせいもの」を青空文庫で辿っていた。ここに引くのも憚られる中身と、書きぶりがぴたりと合っているのがいかにも真率な感じがしてむしろ爽やかだ。彼の下宿が建長寺の庫裏であったというのも、まあ無関係ではない。怠けるのもほどほどに、準備室に上がって夏明けの支度をしながら、少し眠った。
 週末は家を空けるから、それまでに必要なぶんだけの熟れた野菜や豆腐、食パンを買って、ずっと受け取りに行かないでいた革靴を迎えて、やっぱり汗をかいて帰って来た。きつく冷たくしめた素麺を冷やした皿に、これまたやはり冷やした野菜を乗せて食べた。煙草を吸いにベランダに出たら、自分よりはるかに背の伸びた夏草に小さな虫がたくさんしがみついている。気持悪かったから煙を吹きかけると、その毒が堪らないようで慌てて飛んで逃げていくのが、見ていて面白かった。

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