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    昼すぎに仕事がおわって、家に帰ろうとすると、朝ふって一度はやんでいた雨がまた降り出していた。

    なぜかそれにひかれて、無駄な杖にならなかった傘をまたさして、光と緑に蒸す大学通りを歩いていった。

    どうしても読みたくなった『復活』の上巻だけを増田書店で買って、濡れないようにシャツの内側にかくしてロージナに入る。アーモンドチップのかかったバニラアイスクリームとホットコーヒーをたのむ。

    マクベスに出てくる三人の魔女のようなおばさんたちのマシンガントークをうるさいなと思っていると、文字をたどる目が泳いで、おぼれる。目を覚ますと魔女軍団はもう一組増えていて、互いにうるさがってなお大きな声で話すので二階席はいよいよ殺気立ってくる。どうせ夕飯時にははけるだろうという見立ては当たったが、そのときとうぜん自分もお腹がへっている。

    西友で二三日分の野菜と鶏肉、おやつ用の魚肉ソーセージとチーズ、朝食用の超熟と切れてるバターを買って帰る。ちょうどいいバスがなくて、シルカフェの角を折れて歩く。大学の東キャンパスの北辺を、かの背の低い通用門をちらちら見ながら歩く。

    大学寮の裏にはコカ・コーラのベンチがすわった喫煙所がある。誰も人はいない。窓には誰もカーテンをかけないから、彼らが何をやっているかが見えてしまう。

    グランドの金網に何かかかっている。みると、木片のようだ。もともと何かそこには木が生えていたのを、夏草を刈るついでに切り倒してしまったのだろうか。腕を切り落とされてもなお掌だけでしがみつくように、網の目にかかっている。

    その向こうの夕暮れが少しきれいで、僕はそこにどんな木が生えていたかを忘れてしまっている。僕は、シャツの首を留めるボタンをひとつ外して、家へ帰った。

    

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