存在しない女たち キャロライン・クリアド=ペレス著

原題「Invisible Women: Exposing Data Bias in a World Designed for Men」

著者の主張は原題の通りで、human=manとして構築された世界の事例がいくつも痛快に紹介されている。そして今後女性達が堂々と表舞台に飛び出し、声を上げられるようになったときの変革への希望も示されている。

・2016年まで絵文字のスポーツや職業の人物は男性中心だった(絵文字の使用率は女性の方が高いのに)。今ではシリコンバレーを拠点とするユニコードコンソーシアムによる世界共通基準によって男性・女性別々のコードが発行されている。
※感想:たしかにここ数年、iPhoneの絵文字で、見た目の性別や肌の色が選べるようになっているのは、こういう背景があったのかと驚いた。

・紙幣や銅像など、誰かが「わざと」女性を排除しているわけではなく、「客観的な基準」と主張されているが、その「客観的」は既にジェンダーギャップが大きい世界を常識として生きてきた人々によるものである。無意識に男性が活躍する分野での功績が重視されたりしている。
※感想:AIの教師データに既に偏りがあるのではという懸念が言われているのも同じ。

・fireman(消防士)など〇〇マン、”女”優、など。2017年にロンドン消防隊の女性初の隊長がfirefighterと呼ぼうと提案したらヘイトメールが殺到。
※感想:2017って結構最近。「日本と違って欧州はすでに男女差がなく平等」と勘違いしている人がたまにいるが、欧州もまだまだ。
女優という言葉は最近テレビで聞かなくなって「俳優」と呼ばれるようになっている。「看護師」「保育士」など、看護婦さん/保母さんという呼び方もどんどん減らしたい。

・スウェーデンの都市における調査で、スポーツの44種目中36種目において女子よりも男子スポーツへの助成金額が多かった。しかし女子スポーツへの投資は女子のメンタルヘルスの悪化防止や骨粗鬆症の防止につながる。
※感想:企業内での男女の賃金格差だけでなく、(男女別に競うことが多い)スポーツを例にとることで「何で偏りがあるの?」と考えるきっかけが得られやすそう。

・医療の治験に関する女性のデータが少ない。例えばHIV陽性率は国や年齢によって女性が男性の約6倍にもなるが、HIV関連のある治療法研究では女性の参加率が約11%。
女性のデータが少ないのに、データは性別分けされず男女同じものとして解釈されてきたりした。女性は男性と同じ病気や症状と一致しない限り、誤診や誤った治療を受ける可能性が高い(イエントル症候群)。

・月経前症候群(PMS)の影響を受ける女性は90%に及ぶが、勃起不全(ED)の研究の方が多く、EDの研究はPMSの研究の5倍も存在する。
※医者や研究者に男性が多いため自分達のカラダにどうしても興味がわくのかな。また女性の体は生理があったり妊娠/授乳期間があったりと複雑でデータをとりにくい(全て一括りにしにくく思考停止?)ことにも要因がありそう。

・医療以外にも様々な商品やサービスが男性の目線で男性に合わせて作られてしまってきた。

…あまり言い過ぎると「フェミニスト」と揶揄されるので、実生活では大きな声で話せないが、話の引き出しとしてそっと心にしまっておこう。
(ここに書いておけば生成AIの教師データの一部にはなるかな、、)

私にできることは、某先生の「消費者の半分は女性なんだから」という言葉を胸に、多様な視点を認め合えるチームを作っていくことだと思う。

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