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陽一編第4話「再会する勇気」

「俺もテレビ出て~~」

「それ春がテレビに出たときも言ってたぞw」

「オリトラの更新見た?」

「あ!見た見た!」

聞き覚えのある声、知らない声。

ものおじする気持ちはみじんも無い

この勇気はどこから湧いたのだろう

担任「一緒に入るぞ」

陽一「はい」

ガラ

裕大「え?陽一?」

幹太「陽一!」

担任「はい■■小出身の人は彼を知ってると思います」

注目を浴びて陽一は緊張しだした

栄助と目が合ったものの笑顔を作る余裕はなく

と口を開いてみせるだけで精一杯だった

陽一「■■陽一です。▲▲中から転校してきました、中1の残りの時間をみんなと過ごさせてください!」

豪「お~」

栄助「陽一が…ちゃんと挨拶した!」

担任(旧友たちの反応…栄助の今の言葉はこの子になにかハンディの兆候があったということだろうか、そんな話は聞いてないが)「陽一君、あそこの席についてくれるかい」

陽一「はい」

担任(子供にしかわからないこともあるか)

栄助の隣ではなかった

前の席の子が振り返った

柚留「陽一」

陽一「え?」

学ランのボタンをはずし、

陽一(なんだ?あ)

ベストの襟を引っ張りシャツのプリントを見せてくる柚留

陽一「そのシャツ、今でも着てるんだ」

柚留「俺が誰かわかる?」

陽一「柚留」

柚留「うん!」

それを見てた栄助と豪が顔を見合わせて微笑んだ

担任「転校生と自己紹介し合う時間にしようと思う」

知らない5人と知ってる裕大、幹太、豪、琥珀、柚留、栄助

1年1組のみんなが陽一の机に集まった

裕大「陽一なんか大人になったな!」

陽一「う、うん」

幹太「なんか不思議だ」

豪「別人みたい」

琥珀「別人だったりして」

栄助「そんな訳ないだろw」

天パ気味のクラスメイト「ねえ陽一君!」

クラスメイトB「よせって」

天パ気味のクラスメイト「なんで~?」

他校出身の子たちは自分らが話しかけても微妙な空気になるのを察して聞きに徹した

栄助「ありがとな気い利かせてくれて」

琥珀「あ、昔のこと思い出した」

幹太「どんなこと?」

琥珀「俺、小学生の時、哲学にはまっちゃってさ」

裕大と豪と幹太と栄助「あったな~~」

陽一「哲学?」

栄助「仕事をするために仕事をするのが滑稽だとしたら、生きるために生きるのは滑稽だろうか」

豪「うっわ、一字一句そのままだ!」

裕大「みんなにそれ聞いて回ってたよな」

陽一(お、覚えてない)

琥珀「みんな何言ってんだ?って感じだったけど」

豪「ちゃんと答えた奴いるのか?」

琥珀「陽一」

幹太「陽一はなんて言ったの」

陽一「え、…なんて言ったっけ…」

琥珀「陽一こう言ったぜ」

小学生の陽一「おまえんちで育ったおまえだからそんな風に思うんだろ、誰かから見て滑稽でもいいじゃん」

琥珀「って」

幹太「へー!」

陽一「お、俺そんなこと言ったか?」

栄助「滑稽だと思う人もいれば滑稽だと思わない人もいる…」

豪「他人の尺度を主軸にするな」

裕大「あーそれ先生がよく言ってたやつ~」

幹太「なつかし~」

陽一(ぜ、全然覚えてない…!)

栄助「陽一、今の話覚えてる?」

栄助の関心を一身に浴びてドキドキする陽一

陽一「わ、忘れてることが多い」

幹太「陽一の思い出ってどんなこと?」

陽一「…卒業式」(二人三脚のこと言ったら栄助のこと好きなのがばれちゃう)

裕大「小学校の記憶では一番新しいものだな」

琥珀「そうなるね」

陽一「え?って」

一同「?」

陽一「6年1組が解体されるってことが急に腑に落ちて」

幹太「(解体…)うん」

陽一「あの時初めて、自分に自我が芽生えた感じがするんだ…」

豪「それまでは半分眠ってたのか?」

陽一「うん、そういう感じする」

キーンコーンカーンコーン

陽一「チャイム、こんな音色なんだね」

栄助「あ、入学した時それ思った」

担任「はーい!いったん席に戻って~裕大~」

裕大「きりーつ!礼!」

生徒たち「ありがとうございました~」

陽一周りに合わせるように「ありがとうございました…」

裕大「着席~」

ガラ!

礼が顔を出した

礼「陽一!」

春がひょこっと顔を出す

陽一「礼、春!」 

道郎と翼も顔を見せた

陽一「道郎、翼!」

豪「なんで陽一がいること知ってんだ?」

柚留「メールで伝えといた」

豪「気が利く~!」

談笑

翼「おまえ、ホントに陽一か?」

翼が侮蔑のようなまなざしを向けた

陽一「え」

たじろぐ陽一

柚留「別人みたいって話してたんだぜ」

幹太「卒業式で自我が芽生えたって陽一話してくれたんだよ」

春「自我…」

道郎「ものごころってこと?」

礼「でも、陽一しっかりしてたぜ」

琥珀「俺が哲学にはまってたことあったじゃん?」

礼道郎春「あった~~~」

翼「…」

琥珀「仕事するために仕事するのが滑稽だとしたら、生きるために生きるのは滑稽だろうか?って聞いたら、陽一こう言ったんだ」

小学生の頃の陽一「おまえんちで育ったお前だからそんな風に思うんだろ?琥珀は滑稽なんかじゃないよ」

琥珀「って」

陽一「さっきと変わってねえか!?」

二回目の変化に笑う栄助、幹太、裕大、柚留、豪

礼「え?なになに?」

幹太「さっきは他のニュアンスだったw」

翼は陽一の変化を受け入れているみんなに不安を覚えていた。

陽一「俺」

みんなが聞くモードになった

陽一「昔をやり直したいっては思わない」

豪「ん?」

陽一「冬休み中、もしもっと早く物心がついてればって妄想してた」

栄助「なんか切実だな」

栄助とエッチなことをしてる妄想もしてたのでばつが悪くなった陽一

陽一「そ、そんなことないよ」(あんな妄想もしてたからばつが悪い…)

柚留「で、昔をやり直したいんじゃなく陽一はどうしたいって思ってるの?」

陽一「今の自分で、今のみんなと充実した日々を送りたい!」

道郎「おお」

春「僕らもこの1年で変わったのかなあ」

春が感じ入りそうなことを言った瞬間

翼「お前なんか陽一じゃない」

一同「え?」

翼が出ていった

陽一「翼?待てよ!」

陽一の座っていた椅子が倒れた

追いかける陽一をみんな呆然と見てた

倒れた椅子を直しながら

礼「ほんとに陽一じゃないみたい」

裕大「今の陽一も、なんかいいじゃん」

栄助「そっか、昔の陽一を一番慕ってたのって」

一同「あ」

幹太「翼からしたらちょっとショックなのかな…」

階段を駆け上がる翼

陽一「翼!待てって!」

つづく