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ジプとジアの島7

『4つ目の王冠』

トラ「父さんはいつもそうだ!自分はスケールの小さい人間だと思って!リヤのお母さんに王様の役をくださいって言うくらいの気概を持ってもらいたいね!」

トラの父「な、なにを言うんだトラ!」

トラ「どうせこの魚だって、釣りあげてみたら案外小さかったとか言うにきまってるんだ!!父さんを小さくしてるのは父さん自身だ!」

トラの父「ぐぬぬぬぬ、ならば巨大な魚を釣り上げて見せようじゃないか!お前が父さんを見直すような魚を思い描いてみせようぞ!」

トラ「ねえ!今かかってる魚はどんな魚かなあ父さん!!」

トラの父「この魚は…この魚は…!!」

トラ「この魚は!?」

トラの父「塗り替えられることのない記録となる魚だああああああ」

トラ「うん!!」

尻もちをつく二人

トラの父「どうだトラ!!釣り上げたぞ!!クジラの子供の様にでかいじゃないか!!」

トラ「クジラの子供?なんかまだちょっと遠慮があるけど、まあいいや」
===
ジプ「宴の席で、父と子の釣りあげた幻の魚の話をトラとトラの父が再現してくれた」

ジア「うん!」

ジプ「盗賊バクを演じたリクは、実際にはクーと双子の兄弟だった」

ジア「へ~!」

ジプ「ファズは海の民で唯一の引きこもりだった…」

ジア「少年愛とはまた違う、異質なものを抱えてたのかな」

ジプ「熱演できたのは…その異質を抱えてなお、分かり合える日が来ることを予感したからかもしれない」

ジア「劇の中で自分を見つけたわけだ」

ジプ「ああ!」

ジア「…長くて2段重ねの夢はそこで終わり?」

ジプ「いいや、まだつづく。ちょっとはしょられたけどな」

ジア「最後まで聞かせてよ」

ジプ「もちろんさ。」
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ジプ「海の民の村、ドラクエの劇の内容はあっというまに認知された。そしたら残りの鍵を持つ民が、憂いと文化を取引しにやって来たんだ」

ジア「その土地にも新しい名前が付いた?」

ジプ「ケツァル王は2つ目の鍵を、動物を狩るハンター協会の会長に託してた。」

ジア「土地って訳じゃないのか」

ジプ「そうだな。彼らの憂いは、人間の食料となる動物の魂を鎮める術を知らないということだった」

ジア「そっか…」

ジプ「取引の中でハンター協会の会長にももちろん物語を求めた。」

ジア「どんな物語ができた?」

ジプ「不思議な玉に動物の魂を宿らせてその動物と一緒に旅をするっていう物語だ、だけど動物は演技をしてくれない」

ジア「たしかにそうだ」

ジプ「そこで玉に封じられた魂を影絵で表現することを会長は思いついた。」

ジア「おお!」

ジプ「その影絵の劇はポケモンと呼ばれた」

ジア「ポケットに入るモンスター!」

ジプ「ああ。各地で狩猟をするハンターが各々の狩りの物語を影絵で表していったんだ。おもしろいのは影絵の劇に他のハンターが乱入し、自分の持つ玉に宿る影絵を戦わせるというものだった」

ジア「なるほどね~」

ジプ「それをおもしろいと思った会長は影絵同士の戦いの勝敗を決めるためのシステムを作り出した。それがわかりやすくて、小さい子にも大人気だったみたいだ」

ジア「ドラクエ、ポケモン…ふふ、三つ目の鍵を持ってた人はどんな憂いを持ってたの?」

ジプ「ポケモンの影絵から派生して、人型の影絵を戦わせるというものが登場した。その発案者の影絵のデザインが素晴らしく注目を集めていた、彼がカギを持っていたことを名乗り出て、自らの名をジョジョと改めることを求めた。そして取引は成立した」

ジア「ジョジョか。ついに3つの鍵が揃ったわけだね」

ジプ「ああ。」
===
ジプ「マハ!目星をつけておこう!本物の王冠は目前だ!」

マハ「お供します、ジプ様」

シー「マハは王子に慕われてるな」

シズ「無理もないわ。即位を前にして、王子が純真になれるのはマハの前でだけ…」

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ジプ「あった!偽物の王冠には無かった宝石があしらってある!これは間違いなく父上がかぶっていたものだ!」

マハ「ジプ様、私は何も見ておりませぬ。その王冠を箱の中に戻すのです」

ジプ「マハ…何を言う」

マハ「私は神官を全員ここに連れてまいりましょう、あなたはみなの前で初めてその宝箱を開け、再びその中に宝を見つける」

ジプ(黒魔導か!)「わかった!言うとおりにするっ」

===
マハ「ジプ様は?まだお戻りでないのか」

シー「一緒じゃなかったのか?」

マハ「二手に分かれていたのだが、ジプ様の向かわれた方には人気が無くてな…なんだか胸騒ぎがする」

闇バク「こけおどしの罠は今までもあったが、心配はいらないだろう」

シズ「まさか、本物の王冠の入った宝箱の近くに、本物の罠が!?」

ジー「ケツァル様ならやりかねん!!」

ジーが駆け出す

===

ジプ(みんなまだかな…くすくす)

===

シー「ジー!俺におぶされ!」

ジー「頼む!」

マハ「ジプ様!どこに消えてしまわれたのだ!」

シズ「王子はどこに向かわれたの?マハ!」

マハ「あそこにいなかったとなると…あとは書物庫くらいしか」

闇バク「ち!ジプ様に何かあったらただじゃ済まさんぞマハ!!」

===

ジプ(初めて開ける宝箱の中に再び宝を見つける…考えてみれば確かにそうだ…この中の王冠は父上がかぶっていたものなのだから…)

神官たち「ジプ様!」

逆光を浴びたジプ「みんな…揃っているのか?」

マハ「神官一同ここに!」

ジー「ジプ様!ご無事で!」

シズ「本物の罠が仕掛けられてるのではと心配したのです!」

闇バク「ふー」

シー「なんだよ罠なんてねえじゃねえかシズ…」

マハ「ジプ様!まさかその箱は」

一同「!」

ジプ「ああ。これが最後の宝箱らしい…思えば父上が旅立ってから王子にすぎない俺に神官のみながついてきてくれたのは、この王冠探しのおかげだ…」

シー「ケツァル様がジプ王子に残した最後の戯れ…俺は王子にかみついてばかりでしたね…神官失格です」

マハ「何を言うシー!」

闇バク「全員、必要な人材だったのだ、シーよ」

ジー「そうだとも」

シズ「ええ!!」

ジプ「そうさ。王の資質があるのか疑問なのは俺さ…」

ジー「何を言うのです!私はジプ様の資質を疑ったことなど一度もありません!」

シー「そうです!王位を継ぐ者はジプ様の他にいません!」

ジプ「ありがとう…満場一致か確かめたいんだ。改めて問うよ、俺にこの宝箱を開ける資格はあるか?バク?」

闇バク「ああ!開けてくれ!ジプ様!」

ジプ「シー」

シー「お願いします、王子!」

ジプ「シズ」

シズ「王子とお呼びするのはこれが最後となりましょう!!」

ジプ「ジー」

ジー「ドラクエ、ポケモン、ジョジョ…ここから生まれていくさらなる文化をジプ様が取り仕切るのです!」

ジプ「マハ」

マハ「さあ!宝箱を!ジプ様!」

ジプ「いくぞみんな、これからもついてきてくれ!ジプの名を持つ我に!!」

ぎいいい

一同「…」

ジプ「あった…!偽物の王冠には無かった宝石があしらってある…!これは間違いなく父上がかぶっていたものだ!」

ジー「ジプ様…ついに…」

シズ「ああ!!」

バク「あ」

マハ「もう一人のバクめ、涙を見せないために引っ込んだな」

シー「まったく…困った奴です」

===

ジプ「俺は王冠をかぶり、みなに王と認められた…」

ジア「やったね…ジプ…」

つづく