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陽一編第3話「松雪の遺言」(後半)

業「ありがとう、俺らを呼んでくれて。君が呼んだから、俺らは出会えたんだ…」

陽一「…」

ラストアルバムのジャケット

オリトラ図録を取り出す陽一

「竜とは人であり声である
僕はそう定義した
光は人格を得て固有の声も持ち合わせた」

松雪の解説:何よりも速い光、それが人格を持ち合わせ自分とコミュニケーションが取れたなら、100年先の君にも僕らの声が届けられるだろう

陽一(でも俺の声はオリトラの業たちに届かない、時間を超えたコミュニケーションは一方通行だ。…俺の声が届いたら業たちのなにが変わる?過去が変わったら今も変わる…逆に俺のこれからを変えてくことは業たちのこれからを変えてくことになるのだろうか)

うとうと

新学期を目前にして陽一は眠りに落ちた

2030年9月

おぎゃあーーーーーーーーー

業「姉貴!」

業の姉「業…男の子よ」

業「よかった…無事生まれてくれて」

業の義兄「名前は業がつけてくれよ」

業「なんで俺が」

業の姉「あんたのセンス、嫌いじゃないのよ?私たち」

業「じゃあ、虎太郎ってのはどうだ?虎に太郎で若山虎太郎」

業の義兄「古風だねw」

業の姉「気に入ったわ」

===
栞がSNSを見てる

業のアカウント「甥が無事生まれた」

栞「!!」

アスカ「栞!来た?」

栞「うん!業のお姉さんの子供!男の子みたい!」

アスカ「よかった~~~」
===
ミカミ「あ、若ちゃん、甥が生まれたってつぶやいてる」

由人「おー」

愛礎が生まれた日のことを思い出す由人

7歳の自分が赤ちゃんを前にしてる

7歳の由人「この子の名前は?」

由人の母「愛礎(あいき)」

由人(ふふ、今じゃ彼女とラブラブか…)

ミカミ「由人、嬉しそうだね」

由人「ミカミはうれしくないのか?」

ミカミ「自分が父になる日も来るのかなーって思うと気が重いよー」
===
業の姉「生まれたての赤ちゃんって、目を開いてもまだ何も見えないの」

業「像を結んでる最中か」

業の姉「この子がおなかにいる間、赤い血の夢をよく見たわ」

業「それって…」

業の姉「この子の主観的な体験の映像だったのかしら」

業「体の中に光は無いのに、不思議だ、色があるなんて」

業の姉「大人が既に得た知見を使って伝えてきたのかしらね」

業「子供って不思議だ」

業の姉「神秘的よね」

業「あ、なんかイメージ湧いた」

業の姉「仕事行く?」

業「そうする、ありがとな姉ちゃん」

業の姉「あら」

業が出ていった

業の姉(姉ちゃんって呼ばれたの初めてだったわ…もうお母さんになったのに)
===
松雪が死んで三か月

新しい命に出会った

86年後の世界の君に

俺は出会う方法に気が付いた

出会うための地図を持ってる

松雪が残してくれた地図だ

君をそっと支える勇気になれる

君の中に俺が居るし

俺の中には一歩を踏み出す今の君がいる

それは一方通行なんかじゃない―――

空を見上げる業

陽一の寝相

つづく