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岡部えつ|エッセイ|Essay

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#読書感想文

闇の中のジュリエット

 読み返すたびに違う味がじゅわっと滲み出てくるのが名作というものであるわけだが、先般、訳あって古典の名作シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』(平井正穂訳)を久し振りに読み、またあらたな味わいに酔いしれるとともに、400年の時を経てなお現在に重く問いかけてくる問題に思いを馳せる機会があったので、読書感想文的に書き残しておこうと思う。      * * *  ロミオとジュリエットの恋は、暗闇の中で進んでいく。夜の舞踏会で出会い、その深夜にバルコニーで愛を告白し合い、ロレン