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連獅子 千穐楽

2020年1月26日夜の部 千穐楽

大阪では放送が無かった『ノンストップ』での團子密着放送を見た。放送の中で團子ちゃんは「猿之助さんから1日2個の課題をクリアすれば千穐楽までに50個覚えられる」みたいなコメントがあり、初日まで猿之助さんの的確な指導がなされていた。中車さんはインタビューに応えて「私達が歌舞伎の世界に入って意味がここにある」と言う。團子ちゃんを教える猿之助さんは「なんにも思わない」そうなのだ。おもだか一門を支える一角を担うであろう團子ちゃんを育てる事になんの違和感もない。團子ちゃんは猿翁さんのお弟子さんに見守られ、猿之助さんやそのお弟子さん達にも愛され猿之助さんが直々に教える。歌舞伎界では当たり前の事を淡々と指導する。

歌舞伎界は家族、一門はワンチーム、それを地で行くのが猿之助さんなのだ。
初日のTV映像を見て、18日に歌舞伎座で連獅子を観て、ノンストップの團子ちゃんと猿之助さんを見て、ついでに昔のけんけん(尾上右近君)と猿之助さんの連獅子後シテ映像を見て千穐楽に臨んだ。

團子ちゃんは50個をクリアしたかどうかは分からないが、確実に進化していた。前シテであごがちょっと上がり気味なのが気になったが体操ぽかった動きは踊りになってきた。猿之助さんはこれほと丁寧に踊るのかと思う程丁寧な右近。左近との調和を心がけ微かな合図で左近を導いてるかのように見えたのは私だけか。左近を転がし、谷へ落とす。表情がどんどん変化する。厳しく鋭い目で見つめ、谷へ落ちたら不安と心配がない交ぜになる父の顔。左近が起き上がると満面に広がる安堵の表情。とてもゆったりと足の運びも手の指先まで美しく心が行き届いた舞踊だ。これほどゆったりと踊る猿之助右近を観るのは初めてかも知れない。

宗論は福之助君の成長が著しい。舞踊って一朝一夕には上達しないが歌舞伎公演は25日間ある。公演しながら進化と成長するのが他の演劇の違うところかも知れない。まだまだ成長過程ではあるが来月の『新版オグリ』が楽しみになる福之助君だ。

お楽しみの後シテは白い毛の親獅子猿之助、赤い毛の仔獅子團子。登場だけで万雷の拍手。前シテでも半端ない拍手だったが後シテはより盛りあがる。
おもだか屋の拍手だ。浅草の亀ちゃんへの拍手、亀会の拍手、猿之助さん襲名の頃を思いだす熱を帯びた拍手。仔獅子が花道を下がっていく。足の運びもしっかりとしてる。幾つ目かの課題を乗り越えのだ。動物的な獅子の動きは猿之助親獅子ならではでうっとりするほど素敵。親と仔が動きを合わす時に客席からは分からない程の合図を猿之助親獅子はしてるようだ。仔獅子の毛振りも孤を描き、毛振りでも床に毛が着かなくなっている。
私の中にある猿之助親獅子は、仔獅子かと思う程大人げない激しい毛振り、荒ぶる毛振りだが今回は猿之助さんと團子ちゃんの共演が眼目。激しさを求めるのはもっと先だ。猿之助さんが生きて今連獅子が観られるだけで違う感動がある。
ハンカチを持って涙ぐむファンの多い事。
團子ちゃんの努力、日々欠かさず指導してたであろう猿之助さんの外に見せない優しさ。まさに親子獅子にしか見えない連獅子。猿之助さんの驚異的な復活も含めて胸に去来するものがファンの涙を誘うのであろう。
でも私は泣かない。猿之助さんはもっと強くなるから。もっと激しくなるから。もっと進化するから。おもだかの長としてまだ観たことの無い景色を魅せてくれるはずだから。連獅子が観られだけでは絶対泣かない。歓喜の涙はまだ取っておく。

團子ちゃんは喜熨斗のDNAが覚醒し始めたばかり。もう少し経てばおもだかの魂が宿る。ゆく道筋には猿之助さんがいる。
三代目に導かれおもだかの魂を継承するした猿之助さんを見ながら、團子ちゃんは團子ちゃんの歌舞伎を目指してくれる。

猿之助さんにとっては当たり前の同門の共演だ。これからも猿之助さんの進化と團子ちゃんの精進が観られる喜びで終わった千穐楽だった。

連獅子には多くの後見が必要だ。猿之助さんのお弟子さんに寿猿さん。寿猿さんは若すぎて誰か判らなかったけど。二畳台を運ぶフォーメーションが格好よくてシビれる。次の連獅子は早春の奈良。楽しみだ。

#猿之助 #團子 #連獅子 #おもだか屋

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