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禍話「ルンバの家」
※このお話は、怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」から、一部を編集して書き起こしたものです。
禍話 第3夜-1 2016年9月9日放送
http://twitcasting.tv/magabanasi/movie/304885359
(0:06:30ごろから)
九州某地区にあるという家。
廃墟なのだが、「ルンバの家」という名前が独り歩きしている。家の中の様子は何も伝えられていない。おばけが出るとか、そういう話もなく、ただ「あそこはやばいぞ、ルンバの家は」とだけ語られる。しかし何がやばいのかは誰も教えてくれない。霊感がある人もあそこはやばい、と言うのみである。
何も情報がないし、じゃあ行ってみるか、と霊感も特にない、少しヤンチャなグループがその家に行くことにした。
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住宅地の中にある、普通の二階建ての家だった。真夜中だと少し怖いので、夜の9時ごろに行った。鍵も開く。入っていくと、家の中には家具がひとつもない。絨毯もない。全て綺麗に取っ払われている。
誰かが呟いた。
「ルンバが掃除しやすい家って意味なのかな」
特に、怖いところはない。
グループの中に勝気な姉御キャラの人がいた。何事にも動じない人だったが、幽霊系だけは怖くて苦手らしかった。なので、グループの他のメンバーが姉御を少し脅かしてやろうと考えた。
姉御を家の奥の方に行かせておいて、玄関を閉めて閉じ込めることにした。おデブがドアを押さえる係になった。
うっかり誘導されて家に閉じ込められた姉御は、その家の玄関付近でテンパったらしく、ドアが壊れるほど体当たりしながら、
「開けろ!殺す気か!!」
と叫んだ。しばらく皆で普段とは違うその様子をヘラヘラ笑っていたのだが、グループの中の比較的常識のある奴が、ちょっと洒落にならなそうなのでそろそろ開けてやろうとドアの前のおデブをどかした。
それと同時に玄関から飛び出してきた姉御はおデブに馬乗りになり、ボコボコに殴った。全治二ヶ月くらいの重症を負わせた。鼻も折れていたようだ。
おデブをひとまず病院に連れて行き、ひと段落したところで姉御に聞いてみた。何があったのか。
「冗談じゃない、あそこは!」
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玄関のほうでガチャ、と音がしたので、この家に閉じ込められたのは分かった。馬鹿野郎、開かねーな、と言いながら玄関をガチャガチャと開けようとしていた。真っ暗だが、そこまで怖くはなかった。
しかし、急に家の奥で物音がした。
子供くらいの重さのものが動き回る音のように聞こえた。小動物かな?とも思った。
廊下からシュッと部屋に入っていくものが見えた。想像したくらいの大きさの。
これ、やばい。
外に向かって「開けろよ!」と叫んでも、玄関の向こうでは、仲間の騒ぐ声が聞こえるだけだ。
しばらく時間を置いた後、小さな女の子が廊下に出てきた。なぜかその子は右手をずっと壁についている。壁に手をつけたまま廊下を壁沿いに進み、隣の部屋に入っていった。部屋に入る直前、ちらりとこちらを見て、何かボソボソ、と言った。女の子は時々霞んで見えて、それに合わせて声も掠れるので何と言ったかよく分からなかったが、
「○○したら●●だよね」
とこちらに向かって言ったように聞こえた。
女の子のルールでは壁から手を離してはいけないらしく、ずっと壁に手をつけながらズルズル移動している。また部屋から出てきたと思えば自分を見やりながら、
「○○したら●●だよね」
と言い、また隣の部屋にすっと入っていく。その部屋から出てきたら、次は玄関に来てしまう。
いよいよまずい。玄関のドアに向かって、「開けろ!殺すぞ!」と叫んだが仲間は「いつもは冷静なのにバカだな〜(笑)」などと言っており、まだまだ開ける気配はない。
そうこうしているうちに、今度はくっきりとした姿の女の子がとうとう玄関横に出てきた。こちらの目を見て、はっきりと、
「私がタッチしたら交代だよね」
と言った。
うわぁぁ!と叫びながら玄関に体当たりしてどうにか外に出た。そしてドアを押さえていた奴をボコボコにした。
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そりゃボコボコにするのも仕方ない。
だからルンバの家って言うのか、と妙に納得した。
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九州のどこにあるのか、詳しいことは教えてもらっていません。
おわり