小説版禍話01「段ボールの家」
一 そこの町内会長――仮に、石井、としておこう――は、面倒見が良いタイプだった。
だから、山を切り崩して建てたその新築住宅に若い子連れの夫婦が入ってきた時も、石井はすぐに挨拶に赴いた。
その夫婦――ここでは真壁夫妻と呼ぶ――は、夫の真壁は三十代半ば、妻の沙希は三十に差し掛かるかどうか、といったところで、二人の間にはまだ小学校に上がらない年子の息子と娘がいた。
その家は平屋だがなかなかに立派で、庭には砂場も作ってある。
若いのに大したもんだ――と思いながら、石井は真新し