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(3)同時通訳者の英語ノート術&学習法

 この本は通訳者となるための心得書とも言ってもいいかもしれません。メモの取り方や時間術、セルフブランディングといったところも説明しており、まだ通訳者になって間もない人やなりたい人を対象にした本とも言えるでしょう。

 その中に勉強法についても指摘しています。それが「パート2」の部分ですが、ここは通訳者を目指さない人でも役に立つ内容かと思います。

 語学(ここでは英語)を上達させるためには、まず「繰り返しと継続」が重要としており、これができれば誰でも英語はマスターできるとしています。これは当たり前のことなのですが、この継続がなかなかできない人が多い。補足すると継続も週一回程度ではなくて、毎日継続するというのがキモです。

 母語ではない言語を勉強し始めるともちろん知らない単語はわんさか出てきます。この本では一晩で100単語を覚える秘訣についても指摘され、独自の英単語ノートについても解説されています。何かイメージとつなげていくと覚えやすいとのこと。

 そして、隙間時間を使って何度もアウトプット。忘れる前提で暗記する必要があるとも述べています。ここで大切なのは、単語自体の意味を覚えるのではなく、例文で覚えることです。単語の意味だけ覚えても使い方を知らないとあまり意味はないのです。

 著者は「どんなに英語がうまくなっても、第二外国語は、母語以上に上達することはできません」とも述べています。毎日勉強する時間は限られているので、英単語をすべて覚えていくのではなく、必要な単語にのみ絞って覚えていく必要があるとしています。

 そして、単語の習得の仕方を語ったうえで、英語力を上達させる方法として、シャドーイング、サイト・トランスレーション、リプロダクションの3つを提示。この3つをやると、リスニング力、表現力、考える力、論理的思考が身につくといいます。

 シャドーイングはもう一般的に知られているので、詳しくはここで述べませんが、やるコツとして3つを提案。「言い始めた文章は最後まで言う」、「とにかく話し続ける」「感情も一緒に理解する」ということで、とにかく発していかないといけないということです。

 次に、サイト・トランスレーションですが、これは英語を聞きながら、その語順のまま話を理解する方法のこと。一番最後まで文章を聞いてから日本語に理解しようとすると時間がかかるため、文章の頭からどんどん理解できるようにする必要があります。
 
 その方法として誰でも手軽に始められる方法を紹介。英文は何でもいいので、スクリプトを選んだら意味の塊ごとにスラッシュを入れ、文の終わりにダブルスラッシュを入れていくようにする。そして、前から順に日本語に訳していくのだそうです。これはやってみる価値があるかもしれません。

 リプロダクションですが、これは長いセンテンスを聞いた際にそれを正確に記憶する方法で、英語の文章を聞いて、内容をすべて英語で復唱するようにすること。シャドーイングは音声の再現にフォーカスされますが、こちらは同じ単語を使わなくてもいいのです。表現を変えたりして表現の幅を広げていくこともできます。また、自分で発した声を録音して発音や内容をチェックしていく必要もあります。

 最後にリスニングを鍛えるコツを紹介していますが、これは通訳になった人向けの話かもしれません。4つほどコツを伝えていますが、「言葉の意味を考えながら聞く」「語彙力の強化」「背景知識で補う」「知らない単語は再度登場したときに推測する」。より具体的な何かを書かれていると期待したのですが、それはなく、たぶんそれは上記の方法を実践したうえで、この4つを行うと鍛えられるということなのでしょう。

 勉強法については以上なのですが、気になるのは、この著者は同時通訳者ではないということ。最初は通訳者かと思っていたのですが、文章の節々に「~をしているようです」といったまた聞きした表現があり、よく調べるとこの方は通訳者のコーディネーターなのだそう。そういう人が多くの同時通訳者の勉強法をまとめたということなのでしょう。なので、あまり突っ込んだ話がないのはちょっと残念かなとも思います。

 いずれにしても、外国語を上達させていくにはアウトプットが重要。同時通訳者はやはり上記のこういった練習を常にしており、一般人にとっても勉強法は参考になります。

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