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「上手いプレーと美しいプレーの大原則」東京都社会人リーグ1部開幕戦SCFCvs三菱UFJ


■ハーフタイムの指示

ハーフタイムの指示の様子

SHIBUYA CITY FC(SCFC)の戸田和幸テクニカルダイレクター兼コーチが前半の戦いを振り返る。

「相手に向かって鋭くアクションを、ゴールに向かってアクションを起こすんだと。その先にしか、上手いプレーと美しいプレーはないと伝えてます。最初から上手いことしようとしたらサッカーは失敗するって言ってます」

すなわち、少し膠着状態に陥った前半はミスを恐れずに能動的に試合を動かそうとする「心構えのところが、ちょっと足りてない選手がちらほら居た」ことで説明が可能だということ。だからハーフタイムには、その心構えのベクトルを合わせるよう伝えた上で、戦術的な指示を選手に与えたのだという。

「そこからディテールの手直しをして。ようは、4−5−1のブロックに対して、どんなところにまず、主眼を置いて配置すればいいかっていうのは言わせてもらいました」

その結果、後半に入りSCFCの動きは良くなったと戸田TDは振り返る。実際に前後方向にポジションを動かす人の動きが増え、三菱UFJを翻弄して試合を動かせていたように見えた。

■ロック

東京都社会人リーグ1部の開幕節を取材した。3月27日に都内某所で行われたこの試合を取材しようと考えたのは、今季からSCFCに田中裕介が加入したから。田中からの連絡を受け、新体制発表会を取材したのがきっかけだった。

チーム名は耳にしていたSCFCではあったが、その詳細については何も知らなかったこともあり、田中からの視点でレポートする記事を提案。サッカーダイジェストさんが受け入れてくれるとのことで田中本人へのインタビューを申請した。若いクラブなだけに機動力は抜群ですぐに日程の手配に至る。取材日に指定された日の前日がSCFCにとっての開幕戦だということで、3月27日の試合も申請したという次第だ。

驚いたのは東京都社会人サッカー連盟の取材対応で、試合の申請期限は試合の8日前まで。またweb媒体は受け付けられないとのこと。なかなかロックな対応だ。ちなみに東京都社会人サッカー連盟の公式媒体は、TOKYO FOOTBALLというweb媒体だったりする。

基本的に古いのだが、どうにかして先進的なものを取り入れようとする姿勢が、またロックだ。

ちなみに田中裕介はケガのためこの開幕戦を回避。試合を見に行くと、お目当ての選手が出ていないということはサッカーの世界ではよくあることで、まさにロックだ。

■後半突き放す展開

SCFCと開幕戦を戦った三菱UFJは、前線からの守備は諦めつつも、前線と最終ラインとをコンパクトに保ち、SCFCからスペースを奪おうと試合を進めていた。それに対し、SCFCは前半19分に河西守生が先制点を奪って以降、攻めあぐねる展開に。

追加点を奪えないまま前半を終えたSCFCは、ハーフタイムにベンチで阿部翔平監督兼選手が指示。さらに今季からテクニカルディレクター兼コーチに就任した戸田和幸氏の指示が始まる。

S級を持つ戸田さんのハーフタイムの指示を目の前で見させてもらうという幸運を実感しつつ迎えた後半。ボールの出入りが増えて、前後に三菱UFJを揺さぶる攻撃が見え始め、試合は動きを強めた。

待望の2点目は後半65分に。キャプテン宮崎泰右からのパスを受けた源ガブリエルがGKの股を抜く強引なシュートをねじ込む。ちなみに源は、昨季は横浜FCで通訳を務めていたという異例の経歴で、このゴールが彼のラストプレーで、ベンチに下がった。

得点直後にベンチに下がった源ガブリエル

SCFCは終了間際の90+3分に植松亮が3点目を決め、そのまま試合終了。幸先のいい開幕戦勝利で試合を終えている。

■緊張感

試合後に取材に応じた戸田和幸TDはチーム作りについて「10週間のトレーニング中、練習試合でもいいものが出てきてた」のだと評価しながらも、開幕戦特有の緊張が選手たちにあったと話す。

「まあでも初戦なので。おそらくは、(関東リーグ昇格を)目指してる分、緊張するんだろうなと思ってたので。どうせ緊張するなら目一杯緊張しろって言いつつ試合に臨ませたんですけど。緊張してましたね、前半は」

ワールドカップ本大会にも出場している戸田TDは、どのカテゴリーでプレーしていても緊張はあるものだとして、自らも緊張したのだと明かしてくれた。

「僕も今日緊張しましたよ。なんでかと言うと、自分はプレーしないですけど、選手たちがどうプレーできるか、わからないので。そういう意味では緊張しましたし、クラブに対しての責任があるので。僕は選手を成長させて、チームを変えてチームを勝たせるという責任があるので」

だから「11対11の練習ができなかろうが、その中で最善を尽くすものだし、結果だけでないものを、しっかり表現させられるように、しなきゃいけないのは僕なので。緊張はしますよ、それはあまり変わらないです」と説明してくれた。

どうしても関東リーグ昇格を達成しなければならない今季。少しでも勝ち点を伸ばしたいチームにとっては、だから大事な一勝となった。

なお、監督兼選手の阿部翔平は開幕戦の勝利について大事な一歩だとのことで次のように述べている。

阿部翔平監督兼選手

「みんな意気込みがすごく高い中、やって、最初は少し硬くて。うまく行かないという時間帯がすごく続いたので。でも今までここまでやってきたことがしっかりしてたので。それを出せれば問題なく勝てるかなという自信はあったので。結果、それが3点でしたけど。まあそれが実ったので。悪くなかったのかなと思います」

なお東京都社会人サッカーリーグ1部のレギュレーションは以下の通り。

概要
2022年の東京都社会人サッカーリーグ1部は20チームが参加し2ステージ制で実施される。1stステージは10チームずつA、Bの2ブロックに分かれて1回戦総当たりのリーグ戦を戦う。2ndステージはA、Bの各ブロック上位4チーム(計8チーム)による上位リーグ戦と、各ブロック5位以下の6チーム(計12チーム)による下位リーグ戦を戦い、最終順位を確定する。上位リーグの1位が優勝、1位から3位までは関東社会人サッカー大会の出場権を獲得。下位リーグの下位4チームは2部へ降格となる。なお、1stステージの勝ち点はそのまま2ndステージに持ち越される。

TOKYO FOOTBALL

タフな戦いははじまったばかりだ。


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