やり続ける。ただそれだけ。

夏休み中です。
学校が終わり、日本に帰る前に、スイスで色々感じた、即興の賞についてのお話。

実感がない理由。

前回の記事に書いた、≪(私が)賞を取れるなら、ほかの人が自分も取れたんじゃないかって思ったのでは?≫、と言われた話。
随分失礼な事を言うなぁと思いましたが、聴いたときは、怒りよりもショックでした。

言われたときに、人生の先輩として、彼女の言葉を正すことをできなかったのは、私の中で色々な気持ちがあったからです。

単純に、自分が受賞したことが驚きと戸惑いで実感がなかったこと。
語学も不自由で、取るべき学年でもない私の受賞をそう思う人もいるだろうなぁと思ったこと。
他にも上手な人は沢山いると私が思っていること。

音楽が専門ではない友人に「そういうことを言われたんだぁ…」と話していたら、友人が言いました。

「あなたは今年、すごく苦しい日々を過ごして、色々なことに自信を無くしていて、だから、そういう言葉を言われても、言い返せなかったり、まだ自信がないのかもしれないけれど、ほとんどの試験がいい結果だった。
それは、これまでの努力がちゃんと認められたってこと。
試験を聴いた審査員たちは、あなたのもっている技術や、音楽性、成長、アイディア、色々な部分を見て評価しているはず。
学生数が少ない学校だから、先生達はそれぞれの学生の、これまでの学びや成長を見ているだろうし、ただ単に点が良いからっていうだけの受賞ではないはず。
他にも上手な人がいるかもしれないけれど、結局、あなたの ≪ ピアノが好き、音楽が好き ≫ っていうのを、先生達は、あなたからそれを一番感じたんじゃない?」
と。

私も同じ道を通ってきた。

私に失礼な事を言った友人は、その自覚はないと思います。
友人は別の賞を狙っていて、しかし、受賞を逃しました。
だから、シンプルに、受賞を逃したことが悔しかった感情から出た言葉かもしれません。
とはいっても、けっこう歳が上の私に言う言葉ではないよなぁ、とは思いますが。

その時には何も言えなかったけど、その言葉は私の頭の中にずっと残り、段々と、憤りの気持ちが生まれたのも確か。
だいぶ舐められているなぁ、と思いました。

でも、友人からこういう言葉がでるのは、若さ(言い方をかえると未熟さ)と、社会経験不足かな、と。

だって、私も同じような道を通ってきたから。
私も、いろんな人に、だいぶ失礼なことを言ってきたし、やってきました。
たぶん、いまだにしちゃうことがある。
緊張していたり、よく考えずに喋るときに。
そういう時に(本当の自分が出るなぁ。やっぱり私は出来た人間ではないんだな)と感じます。
でも、特殊な現場で仕事をしてきて、鍛えてもらったので、これでも、ものすごく慎重にしゃべるようになりましたけどね。

そして、随分自信があるんだなぁ、とも思いました。
もちろん評価をされることはとても嬉しいし、誇らしいことだけど、賞なんて、縁だと思うんです。
高得点をとるよりも、雲をつかむようなものです。

その自信は、時に命取りになることも、手にできそうなチャンスを逃すきっかけになりえることも、そして、それすら気づかずに逃していることがあることを、きっとこれから社会で学ぶんだと思います。

だから、これをちゃんと正してくれる先輩や上司にあなたも出会えるといいね、と思いました。
私は幸運なことに、そういう上司や現場に出会ったので。

相手を知ると納得できる。

私の通っている学校には、高得点を取る枠に入る学生がいるという噂があります。
学生たちは陰で、何をしてもいい点が取れる学生の事を「先生のお気に入り枠にいる学生」と言います。

しかし、この1年、去年以上に色々な友達と一緒に過ごして相手の事を知ると、いつも高得点を取る友達が、なぜいい点を取るのか、私はその意味が分かるようになりました。
やはり、点を取る子たちは素晴らしいものを持っていました。
表現力だったり、その子の人柄が試験までの取り組みに表れたり、ただ「お気に入り枠」にいるのではなく、その枠に入る理由がありました。
もちろん、それは冷静に考えればわかることなのですが、色々な声を聴いていると、自己肯定感が低くなった私には、惑わされることが多く…

そういうことを言う子たちは、結局、相手の事をよく見ていなかったり、無意識に自信が邪魔していたりするのかな。
自分の点が低い事にも理由がある、ということに気づけないのか…
そういうことも全てひっくるめて、その自信は「未熟さ」だと私は思います。

こちらで出会った沢山の友人、もちろん、技術がまだまだだなって思う子も沢山いるけれど、本当に優秀な子も沢山いるし、私が持っていない、むしろ憧れている能力を持っている子も沢山いて、そういう出会いは私の宝物だと思っています。

結局やり続けること。やっぱりそれなんだ。

休暇前に行われた学科長との面談では沢山褒められ、認めてもらい、この一年の苦悩と努力を沢山受け止めてもらいました。
実は、受賞した科目以外にも、かなり点数が良かったんです。
学科長は「本当によく頑張ったね」と。

受賞したって、即興演奏は自信がないままです。
でも、それは誰かと比べてそう感じているのではなく、トラウマをなくしたい、とか、コンプレックスをなくしたい、とか、自分自身の問題なんです。

受賞関係なく、結局、自分のやるべきことをやるだけ、ただそれだけだと思うんです。
今まで、十数年間、言ってしまえば、音楽の道を意識し始めた子供の頃から、私はそれを淡々と続けてきた。
だから、続けることが大事だということはわかっていた。
でも、今年、また改めてそれを感じました。
やっぱり、それなんだ、って。

学科長からもらった言葉や、今日、友人にもらった言葉は、本当に嬉しかったし、励みになるし、ありがたく受け止めて、心にしまっておこう、と思いました。

一番のライバルは自分だし、とにかく、やり続けるしかないんです。

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