見出し画像

「お気の毒様」えとふみギャラリーNo.6


画像1


                           ( ↑  写真)
いつもの道を散歩していると、つい足を止めてしまう所がある。どうしてこんな可哀想なことになったのだろうかと。
その道は、もと小さな川を暗渠(あんきょ)にして地上を遊歩道にしたもので、両側には花や木を好きな方たちが世話をし、育てている。私にも四季折々を楽しめるお気に入りの散歩コースだ。その道で見つけたのだ。

道に沿ってブロック上に金網のフェンスがある。道に面した住人が設置したものだろう。
ある日、そのフェンスの上部に3本の木片が妙な状態でくっついているのに気付いた。それぞれの長さは25〜50㎝位で、フェンスの金網が木片の内部に入り込んでいる。
事情は分からないが、ある日突然、幹と金網がくっついてしまったところを残して、前後をバッサリと切ってしまったようだ。

私は樹木が好きなので、さらし首のように金網にくっついている3本の木片の残骸を見る度にお気の毒様と思う。しかしながら木たちはどうしてこんな残酷な運命を辿ったのか、時間をさかのぼって考えてみた。

多分どこからか運ばれた木の種がブロックの下で密かに根付く。目障りでもないので住人に抜かれずにひょろひょろとフェンスに沿って背を伸ばして成長した。そして金網のむこう側は何と暖かい陽が射すことか、木の先っぽの若芽はついに金網の目をくぐり抜け、その後は順調に葉を茂らせ、栄養を幹に送り届けることに邁進する。
木は空に向かって枝を伸ばし、幹も太くなる。だんだん幹と金網には難しい軋轢部分が発生してきた。この先をどう見据えるか、木の方は生きているので解決の鍵を握っている。台風などの強風には支えになってくれた金網をいっそのこと飲み込んで、金網と一体となれば問題解決だと3本の木は合意した。それからの幹たちは順調に成長をとげ、金網との共存の長い時を過ごしていたのだ、切られる瞬間まで‥。

この木辺たちの顛末は私の想像だが、実際のところ元気な時の木の姿を見たかった。どんな種類の木で、花は咲いたのか、実はつけたのかなど。そして改めて金網に情けない姿をさらしている木片たちをじっくり観察すると、風雨と乾燥、微生物の分解からか、大分弱ってきている。時が経てばいずれ剥がれて地上に落ちるのだろう。そして3本の木に包み込まれていたフェンスの金網部分はどうなっているか、とても興味がある。

しかし私の方が余り時間が残されていないのでそれを見届けるのは無理かなと思うが、他のどなたさんかが立ち止まり、哀惜の念で見てもらえればそれはそれで木の供養になるような気がする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?