【小説】[7]訓練(『僕のファーストテイク』)

僕がまだ子供の頃、"超能力"や"超人"みたいなのが流行っていた。"フツーの人"ではない人達がテレビ出演し、その特技を披露する。
その後、コンプライアンス的な影響もあり、昔ほどの内容をテレビで流れることはなくなったように思う。

今でこそ規制が厳しくなったが、テレビを代替する形で、ネット動画でそのような内容の映像が流れるようになった。今もたまにあるようだが、危険な行為が事故に発展してしまうケースもある。

なぜ「そのようなリスクを取ってまで……」と思うところもあるが、その人達も生きている中で、僕のように"感情スイッチ"のようなものを"搭載"してしまったのかもしれない……。


特殊能力系や才能系は、昔からアニメ漫画においても流行テーマの1つだと思う。"生まれつき"パターンもあれば、"厳しい修行で手に入れる"パターンもある。僕の場合は、後者に当てはまるだろう。

ベースになるのは"痛みを感じない"系。そのための筋力強化に努めた。三島由紀夫氏(小説家)は、幼少の頃、病弱だったらしく、それがあの肉体改造を行うきっかけにもなっているらしいだが、僕も似たような理由かもしれない。

とはいえ、僕が目標にしたのは中国妖怪"キョンシー"。三島氏と重ねるのは"こじつけ"が過ぎるかもしれないが……。
どんなに激しい攻撃を受けても、無表情でズンズン(ピョンピョン)突き進む姿。"感情を消す"というアイデアは、キョンシーから着想を得た部分が強い。

どういう"感情"を抱いたか、その"感情"を自分でどう表現していたか、すでに記憶にない。未就学児だったこともあり、表現に苦しんでいた記憶もある。
今の僕が表現するなら、ツラさや苦しみ、痛みなどの"苦痛"が適当な気がする。この苦痛から解放されたい……というより、「感じない方法はないだろうか?」と考えていたように思う。

キョンシーのように世代を越えて生き続ける。苦痛を感じなければ、死ぬまで苦しむことはない。
そう考えてみると、僕は幼い頃から苦痛との戦いをしていて、"今の僕"では乗り越えられない苦痛に今直面しているのかもしれないと思った。


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