【小説】[6]弊害(バグ)(『僕のファーストテイク』)

高校時代のこと。この頃はまだ、原因が"感情スイッチ"にあることは気づいていなかった。
何の原因かと言えば、それは"国語"の成績が伸び悩んでいたこと……。

国語の成績の悪さは、小学生の頃からの悩みでもあった。平均点を下回る程ではないが、小説や要約などが苦手で、全国テストのような"教科書暗記"系ではないテストで、唯一満点を取ったことがない科目だった。

解説を読んでも、先生の解説を聞いても、個別で質問に行っても、理解できなかった。熟語などの言葉の理解が足りないのだろうと思い、わからない言葉や用法が出てくると、すぐに辞書で調べるようにした。

記憶できるものは記憶していったが、それでもなぜその答えになるのか理解できないままだった。
もともと記憶力には自信はない。社会科目も暗記が多かったため、苦戦することも多かった。とはいえ、国語科目のような"理解できない"感覚は無く、そこまでの苦手意識は無かった。

また、国語力の弱さは、英語科目にも響くようになった。長文読解の際、感情的な内容が書かれていることは理解できたが、日本語訳で解説を読んでも、なぜその答えになるのか理解できないことが儘あった。


苦手ポイントはその後も解消されることは無かったが、担任のアドバイスもあり、得意分野を伸ばすことに専念し始め、大学入試直前には、ある程度全体的に成績を伸ばすことができた。
成績の伸び悩みの原因を"感情スイッチ"のせいにするのは間違っているのかもしれない。だが、苦手ポイント以外の成績は半年足らずの期間で順調に伸びているし、周囲からも驚かれた。「あの一樹が?」と。

思い返せば、僕はよく他人に不快な思いをさせたり、人とは違うところで怒ったりすることがあった。この辺も、"感情スイッチ"を導入したことによる"バグ"なのだろうと考えている。


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