こんなに脆いものに

好意なんて、人間の感情の中で一番脆い。
敵意や憎しみは永遠にだって続くのにな。
どうやら私以外の人間の言う「好き」はとても軽くて一過性のもので、挨拶がわりみたいなものらしい。
彼らにしてみれば、私の好意は重すぎるようだ。

ずっと大好きだよ、仲良しでいようね、と言っていた友達もほとんどが消えた。次は誰が離れていくんだろうなんて思ったりもする。
ねえ人間達、頼むから私に気軽に好意を渡さないでくれない。
馬鹿正直に信じてしまうし、好きになってしまうし、私だけずっと好きなままで、失ったものの数を数えるのは十分だよ。

それでいて、そんな脆くて軽くて不確かなものからしか得られない幸せがあるなんて、ひどい話じゃないか。
たとえば草や花を愛したりとか、芸術に心動かされたり、陽の下で汗を流したり、そんなことで満たされて幸せになれるなら、そのほうがよかった。
他人の感情なんてどうにもできないものに、期待したり縋ったりするなんて愚かだ。
それなのに、誰かに好きと言われたり一緒に過ごすことがこんなにも嬉しくて満たされるなんて、もう、それでしか幸せになれないなんて。

誰のことも好きになりたくない。どんな言葉も愛も信じたくない。
それなのに、誰かの口からしか得られない幸せを絶えず求めてしまっている。


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