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原宿のアイスクリーム屋さんの少女AとBの話。

原宿のアイスクリーム屋さんで行列に並んだ。最後尾に並ぼうとしたら、並んでいる人たちからなんか変な目線を感じる。さりげなく彼らの手元を見る。並んでいる人の手にはレシートのようなものが握られている。どうやら先に会計のようだ。行列の横をすり抜けて店の中に入る。
横長のカウンターがあり、アイスクリーム製作を直に観れるようになっていた。左に少し歩くと角にレジがあった。レジ前に誰も並んでいない。レジ係もいない。カウンターの中で若い、もしかしたら高校生かもしれない女の子が2人、必死にアイスクリームをデコレーションしてる。こちらを振り向こうともしない。しばらく様子を見ても、なんら状況は進展しないのを察する。店外にまで溢れる10人ほど並んでいる客に対して、スタッフはこの2名のようだ。完全にキャパオーバーだ。かなり待たされそうな予感。一瞬帰ろうかなと思う。しかし、原宿なんて滅多に来ない。せっかくなのでもう少し待つことにする。なんとか自分の存在を認知して欲しくて、作業に没頭している2人の横顔をガン見し続ける。一カップ作り、客に渡したタイミングでこちらを振り向き「少々お待ちください」とレジから遠い方の少女Aが小さく言った。
この店のシステムのようなものがわからなかった自分の行動が、間違っていなかったことにホッとする。
しかし、そこからまた10分ぐらい待たされる。彼らは、まるで魔物から自らを守るかのように、私がいるレジの方を向こうとしない。少しイラつきだす。行列が半分に減る。ここでやっと少女Bがレジ側に来て注文を聞いてくる。「バナナチョコレート」を頼む。渡されたレシートには整理番号が大きく印字されていた。外に出て行列に並ぼうとしたら、新たに5人も増えている。ばぁばとその娘とさらにその娘という感じの女子ファミリーだった。手元にレシート兼整理券は見当たらない。会計を先に済ませるシステムを教えようかどうか迷う。しかし、もし万が一どこかに隠し持っていたら憤慨されることになる。黙っていることにする。数分後、列が前に進み、私の前の5人組が自分達の過失に気づき、出来上がり待ちの行列から慌ててレジの方に移動。一気に残りが1人となる。そこからは目の前のアイスクリーム製作工程をガン見し続ける。カウンターには直径70センチぐらいのまん丸の鉄板がある。お好み焼き屋さんの鉄板のように黒ずんではいない。アルミかステンレスのようなグレーシルバー色だった。その上にバナナの小さな切り身を乗せる。その上からチョコクリームを適量散らす。バナナを細かくカットしつつチョコクリームに溶かし込んでいく。ここで作業してる女の子が台の右下に手を伸ばし、スイッチを入れるような仕草をする。おそらくこの台は冷却装置がついているのだろう。台の上の液状チョコクリームがみるみる固まっていくように見えた。それをヘラで伸ばしまくる。伸ばし切ったところで、鉄板とチョコクリームの間にヘラの先を差し込み剥がしていく。クルクルクルクルとロールになっていく。端まででひと巻きできる。若いのに実に素早い。慣れた手つきである。製作工程は分業になっていた。ロール巻きチョコをトングでつかみ、紙カップにスコンスコンと縦に並べて収め、すぐ横の作業テーブルに移す。
その上に生クリームをブチュ〜絞り出し、その上にチョコクリームをブチュと回しかける。そこまでが少女Aの役目。
その後少女Bが、バナナとかクッキーとか乗せていくのだが。こちらの動きがいささか変。
なんと、お店のメニュー表をガン見してる。そして、少女Aが置いた紙カップの上の半完成品と見比べている。どうやら注文したパフェのデコレーションの具を確認しているようだ。
多分、まだ入って日が浅い子なんでしょう。一瞬、やれやれと思ったが、それでも必死に作業に取り組む姿に少し感動を覚えた。
最後に出来上がりをメニュー表の写真と見比べ確認。
プラスチックのミニスプーンを刺して、完成〜。
上から吊るされている感染予防対策用の透明なビニールカーテンのしたから、スッとカップが出てくる。
私は、受け取る時思わず「ありがとう」と言ってしまった。
ひと口食べた。
彼女たちの汗と涙の結晶と共にアイスクリームを味わった。

うんっ!こりゃ美味しい!

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