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困難を、進化につなげるレジリエンス戦略(2023年11月14日号)

こんにちは。本木裕子です。

5月からETIC.は、Hatch Enterprise(ハッチ・エンタープライズ、以下ハッチ)という社会起業家の育成団体CEOダーク・ビショフ氏と協働しています。ハッチは、英国・ロンドンを拠点に、女性、黒人・アジア系移民、障がい者など起業へのハードルが高いとされる層に対して、これまで6,000人以上の起業を支援している団体です。その創業者であるダークは、起業家人生20年、ハッチの創業10年の節目にサバティカル(学びのための長期休暇)の一環で、5月から3か月間、日本に滞在していました。

この来日は、ダークの人生の「レジリエンス戦略」の一環でした。

ダークには、社会主義国家であった旧東ドイツに生まれ、その後イギリスに渡りソーシャルビジネスを複数立ち上げ、手放しという人生の中で積み上げてきたレジリエンス戦略がありました。今回は、彼の考えるレジリエンス、そしてその高め方をテーマに開催したイベントのダイジェストをお届けします。


レジリエンスは、「回復力」「復元力」「弾力」と訳されます。変化や逆境において、しなやかに適応したり、立ち直る力のことです。

レジリエンスのある人の例として、アパルトヘイト(人種隔離政策)の撤廃を訴え、27年間に及ぶ獄中生活の後に大統領となったネルソン・マンデラや、貧困に苦しみ自殺を考えていたところから、世界的な文豪として活躍するようになった「ハリーポッター」の著者J.K.ローリングがあげられます。
皆さんの周りにも、きっと思い浮かぶ方がいるのではないでしょうか。

危機の後には、成長がある

ではそのレジリエンスを高めるには、何ができるか。
一つは危機について理解することだとダークは言います。
危機(crisis)の語源は、ギリシャ語(krisis)「病状の転換点」です。つまり、重要な瞬間、または非常に難しい、危険な瞬間のことです。

危機は、コンフォートゾーンから出るときに訪れます。コンフォートゾーンは、ストレスのない居心地の良い、慣れ親しんだ環境です。そこに飽き足らずに自分から出るときもあれば、投げ出されることもあります。


ダークの場合は、ドイツからイギリスへ行く際に、家業を継がないという判断をしたとき、また過去の組織での共同創業者と袂を分かった時が、危機だったと語ります。

「人生を振り返ってみると、危機のあとに回復し(レジリエンス)、さらに成長があった。実際に体験することで、危機を活かすこと、さらに、自分からコンフォートゾーンを出ることが、成長に欠かせないと学び、それを人生のジェットコースターと名付けた」ことを話してくれました。

※ダークの作成した図をETIC.にて翻訳

あなたにとってのレジリエンス戦略は?

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これは、衝撃を糧にして、より成長していくという考えで、「反脆弱性(Antifragile)」と呼ばれます。
前述のネルソン・マンデラは「生きるうえで最も偉大な栄光は、決して転ばないことにあるのではない。転ぶたびに起き上がり続けることにある。」と残しています。失敗や自分のコントロール外にある事故なども糧にして次に進む、ということだと私は捉えています。

危機への対応方法は、一人ひとり異なり複雑です。似た事象への対応経験があるか、またその人の置かれた状況(ウェルビーイング、財政、家族、周囲環境など)によっても異なりますし、「まずは様子をみる人」もいれば、「すぐに反応する人」もいます。

いかに危機を糧にしてレジリエンスを高め、反脆弱性を得ていくかのヒントとして、ナシーム・タレブ氏が提唱したバーベル戦略があります。要点は、(1)マイナスのリスクを減らす、(2)プラスの機会を最大化する、(3)マイナスが少なく、プラスが大きい機会を探すことです。

ダークの場合はその実践として、毎日日記をつける(内省によって状況や感情を認知する)、メンターやコーチとの対話や友人・家族のサポートを持つ(サポートしてくれるネットワークを持つ)、週2~3回の古武道(趣味)、1日1万歩(身体ケア)、「おおまかな計画」で人生はジェットコースターだと理解すること、居心地が良くなりすぎたら自分自身に挑戦することを例として出してくれました。

あなたにとってのレジリエンス戦略は、何でしょうか?

Editor's Note - 編集後記 -

ソーシャルチームの川島です。
5月から3ヶ月間、日本でサバーティカルを実践したダークさんですが、その後はまたロンドンへ戻り、現在はHatch EnterpriseのCEOを共同経営に転換し活動を継続しています。数ヶ月の単位で事業を離れるということは自分・会社のメンバーにとっても大きな決断であったが、あえてこのような時間をとったことで、他のメンバーがこれまでとは異なる才能や能力を発揮させる機会があったり、投資家や役員に対しHatch Enterprise自体が持続的な経営をできたと言っていました。そして結果として、現在はHatch Enterpriseはダーク以外のメンバーが共同経営責任者として立つことで、組織としてのレジリエンスが高まったという実例が生まれています。ぜひまた日英の起業家同士、お互いのレジリエンス戦略を共有できるような機会があると、エコシステム全体の知恵が豊かになるのでは。そんな機会の創出もしていきたいと思います。

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