国内のたまご10%を消費することの大きさ。本気でサステナブルに向き合うキユーピー株式会社 續木智志さん
1919年に設立。マヨネーズやドレッシングなどのご家庭に必ずある調味料を長年提供する日本を代表する食品メーカーであるキユーピー株式会社。実は渋谷に本社があるんです。
我々、渋谷新聞もメディアサポーターとして協力する渋谷エシカルウィーク(8月19日から8月25日開催)にキユーピーさんも協賛しているということで、経営推進本部 サステナビリティ推進部 環境チームリーダーの續木智志(つづき さとし)さんに高校生ライター秋山愛美がお話を伺いました。
社会環境について考え、社内のサステナビリティを盛り上げる
ー續木さんの所属する「サステナビリティ推進部」とはどんな活動をする部署なのでしょうか?
今のサステナビリティ推進部ができたのは2020年です。当社には、SDGsが採択された2015年よりも以前から、企業の社会的責任を果たすことを考え、実行するCSR部がありました。これが2020年よりサステナビリティ推進部となり、現在の形になります。
それまで社会や環境について考えるのはCSR部の仕事と捉えられていたものが、「みんなが自分事として社会や環境について考えるべき」という捉え方に会社全体が変わってきました。
例えば、キユーピーの事業に関連する課題だけでも、二酸化炭素の排出問題、プラスチックの問題や、食品ロスなどさまざまな社会課題があります。それらの課題に対しキユーピーとしてどのように向き合い、対策を進めるかを舵取りするのがサステナビリティ推進部の役割です。
10年越しの思いでサステナビリティ推進部へ
ー續木さんについて教えてください。私もキユーピーにいつか入社したいので續木さんのこれまでのキャリアを教えてください!
大学を卒業して2005年4月に新卒でキユーピーに入社しました。そこから労務→工場総務→法務→経営企画と社内の管理畑をたくさん経験して今のサステナビリティ推進部に配属となり1年経ちました。10年ほど前、旧CSR部の頃から異動の希望を何度か出していましたが、なかなか実現しませんでした。なのでサステナビリティ推進部に入ることができたのは10年越しの思いです。
かつては個人的に週末だけでなくたまに平日に有給休暇をとってボランティア活動などの社会貢献活動をしてきました。目に見える利益を生み出す事業も大切ですが、社会貢献活動のような取り組みも大切だと感じていたことから、そうした取り組みを個人だけでなく企業という大きな母体でおこなう必要性を2012年頃からずっと考えてきました。それがようやく現在、SDGsをはじめエシカル、サステナブルなどの観点から社会で大きく取り上げられるようになり、改めて自分自身にも火が付き「時代が私に追いついた」と勝手に思いながら仕事に励んでいます。
食材の廃棄を限りなく減らすエシカルな取り組み
ー「渋谷エシカルウィーク」が8月に開催されますが、キユーピーならではのエシカルな取り組みってどんなものがありますか?
キユーピーのエシカルな取り組みは様々あるのですが、ここでは大きく2つご紹介します。
まず、1つ目に卵の有効活用です。マヨネーズやドレッシング以外に業務用などもあわせて大量の卵を日々使用して商品を製造しており、日本全国で消費される卵のうち、約10%が当社によるものと言われています。そのため卵の殻、卵膜(薄皮部分)といった可食部以外も如何に有効活用できるかを重要視しています。卵殻は農業の土壌改良材として再生利用し、卵膜は化粧品の原料として使われたりしており、余すことなく使用します。
2つ目はサラダクラブの取り組みです。
サラダクラブは当社と三菱商事さんとで設立した子会社で、スーパーなどで見かけるカットサラダなどを扱っています。カットサラダはキャベツやレタスなどの葉物野菜を使用しますが、製造工程でどうしても食品として使用しない部分が生じます。ですがこれらをそのまま破棄せずに、残渣(ざんさ)という形で牛の飼料として利用したり、残渣を堆肥化してキャベツやレタスを作っている農家さんにお戻しするなどして食資源を無駄なく活用しています。
ーエシカルやサステナブルな社会を踏まえて開発された商品はありますか?
こちらについても2つ紹介します。
まず、キユーピーにはテイスティドレッシングというシリーズがあります。今までのテイスティドレッシングはボトル全体の30%に再生プラスチックを使用していましたが、、ボトルの100%すべてを再生プラスチックで製造することが実現しました。8月上旬から順次出荷予定です。
2つ目はGREEN KEWPIE(グリーンキユーピー)という商品です。キユーピーではもともと食文化の違いやアレルギーなどの理由で海外からの訪日客の中には卵を食べられない人もいるだろうと想定し、「食の多様性」という意味も込めて卵の代替品であるHOBOTAMAを業務用に販売しました。それが国内の卵アレルギーを持つ子どもの親御さんなどに注目いただき、一般にも買えるようにしてほしいという要望があり、2022年の3月に市販用を発売しました。これらの経験をヒントに現在では「グリーンキユーピー」ブランドを展開中。現在、ごまとシーザーサラダの2種類のプラントベースドレッシングを販売しています。
何となくでは済まない、生きていく次世代のために本気でサステナブルに向き合う
ーキユーピーにとってエシカルな取り組みが重要な理由は何かありますか?
食品を扱う以上は豊かな自然と密接に関わっているという認識が私の中にあります。また、環境に配慮をしないと結局は自分たちの首を絞めることにもなります。今後気候変動の影響で温度が上昇し、今の産地で原料が取れなくなるかもしれないという状況下で次世代に迷惑をかけないようにするためにもサステナブルな取り組みは、食品業界にとって一番重要なテーマなのではないかと思っています。
ライター後記
私は中学生の頃から美術部に所属し、キューピー人形だけをモチーフにした作品づくりを続けてきました。そして、渋谷新聞での目標はキユーピーさんに取材をすることでした。実際にインタビューをさせていただくと、持続可能性を重視し、社会的責任を果たす企業としての姿勢がとても魅力的でした! また、續木さんのように、社会課題への思いと地域社会への貢献意識を持った方が働いていることを知り、さらにキユーピーさんが大好きになりました。
◾️續木智志 略歴
2005年にキユーピー株式会社に入社し、今まで労務→工場総務→法務→経営企画と一貫して管理畑を歩む。
法務部在籍時に会社の先輩の誘いをきっかけにフードバンクのボランティア活動に目覚め、食品ロス等の環境問題について強い関心を持つ。会社でもサステナビリティに関する仕事がしたいと考え、2022年7月にサステナビリティ推進部への異動を実現。
現在食品ロス削減やGHG排出量削減などの環境課題や、人権や環境に配慮した調達などの社会課題に対する対応窓口としてキユーピーグループの取り組みを推進している。また、ステークホルダーに当社の取り組みを知ってもらうため、自社の取り組みを積極的に発信している。
渋谷新聞について
渋谷新聞は渋谷エシカルウィークのオフィシャルメディアパートナーです。
本記事は2023年8月17日に渋谷新聞にて記載された内容をもとに再編集しました。
オリジナル記事はこちら。
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