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(後編)2021.7.18“真夜中の五分前”行定監督舞台挨拶レポート at横浜シネマリン

こちらは後編になります。前編はこちらからお読みくださいね。

中国語のことや他の共演者たちとの違い

春馬にはとにかく気遣いがあるけど、中国の俳優たちには全く気遣いがなく、コミュニケーションをとろうとしてもゲームばっかりやっていたようです。でも、台湾のチャン・シャオチュアンはナイスガイで春馬の演技を細かくずっと見ていて『彼はすごい!』と。春馬がミリ単位の繊細な部分を表現してくるから、共演していたら自分の演技が如何に大雑把な芝居をしているかを感じてしまい、ものすごくコントロールしたり、逆にパワーを出さないと負けてしまうとまで言ってたようです。

監督から見ても春馬の演技は本当に繊細で、視線や目の色、目芝居の上手さが全然違ってて、穏やか・冷たい・猜疑心など、何も言っていない顔の裏にある気持ちが何かあるというのを表現できる。こういう俳優は中国圏や台湾にはいないそうです。『彼は本当に経験からああいう繊細な芝居ができる。だからすごくクローズアップが美しい。』とおっしゃっていました。

中国語は本当は下手でもよかったのに、春馬はとても上達してしまったというのは有名な話ですよね。
中国語のコーチが上海劇団の演出家もしているオバちゃんらしく(笑)、その台詞はもっと感情的に!とかやっちゃったようなのです。監督はやるなって言ったのにすごく磨きのかかった中国語になってしまって、『これ、何年ぐらい中国に住んでいる人?』って聞いたら、『10年ぐらい住んでいる人に仕上がったから!』と。来て1年しか経ってないし、孤独を描きたいのに、何でこんなにしゃべれるようになってんだよ!って、現場で最初はもめたそうです。

でも、春馬には悪気はなくて、言われたからそのまま演る。そのぐらい没頭していたので、吹き替えが1個も無かったようです。中国の映画は吹き替えが当たり前。だから監督は春馬にこんなエピソードを伝えたようです。
“フラワーズ・オブ・シャンハイ”という作品で出演されている羽田美智子さんはトニー・レオンと会話している時は日本語でしゃべっているようです。
羽田さんの日本語の台詞にトニー・レオンは中国語で返しているので本当は会話として通じていない。でも羽田さんは日本人だから、日本語でしゃべる方が感情的な顔が作れるからそれでよいと。知らない言葉で感情的な顔はできないから日本語でよいと。それでできあがった映画では羽田さんの声は全然なくて、吹き替えが入っている。こういうやり方が中国圏の人たちの常識なんだそうです。また、トニー・レオンはその映画で広東語は話せるけど北京語は話せない。だからろうあ者という設定にさせられたことも。そういう状況を常識としている中国のことを話して春馬をビビらせましたとおっしゃっていました。
『だからそういう意味では中国でこの映画、大々的に公開されるけど、中国での上映版は春馬は全部、吹き替えになっているかもしれないよ?』
というと、春馬は、
『それは困ります。それ、いやっすねー。一番いやっすねー。』
そして羽田美智子さんのフラワーズ・オブ・シャンハイを見せたそうです。羽田さんの声を知っている春馬からすると、明らかに低い声になっているのを聞いて『もっとキレイな声なのに、何でこうなっているんですか?』と。
『こういうことになるから、春馬もちょっと気をつけた方がいいぞ。』そして『インターナショナルバージョンはお前の声を何とかキープするけど、中国語バージョンはどうしても変える可能性があるからな。中国の上映を観に行ったら違う声だったらどうする?』と監督が聞いたそうです。
そうしたら、『すんごい、ヤダ!!!』と言って勉強したようです。

だから、世界的な場でもどこでも吹き替えはなく、完璧だそうです。
上手く話せないところがあれば、俳優たちには彼は万能ではないから聞き返していい、聞き返しているシーンもまたリアルかなと話していたそうなのですが、共演者からも『何の問題もない』『すごく、上手い』『彼は美しい』とすごくキレイな中国語を話していたようです。

現場での三浦春馬さんの様子

監督から見た三浦春馬という人は、すごく甘えん坊だったそう。甘えん坊のふりをしていたり、「男」だったり、「男の子」だったり、それを全部含めて男らしいなと思われたそうです。
そして、責任感がとても強く、争いごとがすごく嫌と感じたそうです。

中国に現場は日々争いごとで、監督は怒り捲って骨を折ってしまったと(笑)
そのぐらい毎日怒られていたのは、中国の人が平気でウソをつくから。そのウソをつくのは中国のスタッフでは常識で、あいつがウソをついたのは分かるけどね~で許されるのだそうです。
ロケ場所にウソをついて、ここでできるという所に連れていってくれるんだけど、朝になったら、やっぱりゴメン、できなくなったと必ず言うらしいのです。でも何故か次の場所が用意されていて、ココでやってくれと言われるそう。映画を観て頂くとわかるように、ほぼ結構よい背景とか場所でしょ?でも、これよりもっと良い場所があったらしいのです。
中国スタッフが用意したとこが嫌で、日本の助監督が探してきて、ここじゃできないのかと尋ねると、『ここかぁ…ここだったらいいかな』と上から目線でいうとか(笑)

こんな感じですごく揉めていることを、春馬は現場にいて分かっている。でもそこの中に自分の苛立ち、待たされる+αしてしまったら、たぶん崩壊してしまうと思ったのではないかと。だから監督が矢面になって揉めているところから、彼はやっぱり距離を置いていて、本当に見事なぐらい全体を見渡せる程よい距離の場所に春馬がいたようです。

この写真が唯一、現場で撮った写真のようです。
この時、この前の瞬間、監督が超怒り捲ったあとで、とんでもないことが起きたそうです。撮影時に向こう岸へ照明が漏れたみたいなのです。そうするとこっち側で撮影しているのに向こう岸の管轄の警察が出てきて、光が入っているから撮影を許さないと言ってきたそうです、こっちに撮影機材があって光が漏れているだけなのに、お金をよこせっていったようです。要するに普通の警官が賄賂が欲しかったのだろうって。こういうのがあっちでは当たり前になっていて、撮影を中止させられるのだとか。
それに怒って、バカバカしいなと思った後に、パッと見たら春馬が上の方にいたので、そこに行って『ゴメンね~』と言ったら春馬が、『しょうがないっすよねー。これも中国だと思って楽しみましょうよ。』というような、楽しみましょうじゃなく、もうちょっと気遣いのある感じで返してくれたようです。それで『じゃあ、写真でも撮るか』と言って撮影した唯一の写真だそうです。
なんかあの時も『何が起こっているんですか?』と、春馬は本当に分かっているのに、監督に全部ガス抜きをさせて、『まぁまぁ、これも中国ってことですよね。』言ってくれたそうです。でも春馬も裏ではすごく怒りはあったんじゃないかと監督は思ったそうです。とにかく、思い通りにならないから。でも、思い通りに行かないのが人生だなと彼は思ったんじゃないかなと。だから(春馬は)そういういい奴です、とおっしゃっていました。

中国4,000スクリーンでの公開のスケールとは?

現在は4,000スクリーンどころじゃなく、もっと増えているようですが、当時は高倉健さん主演の映画が2,000スクリーンで公開されて、日本映画では最高の上映数だったけど、それを越えたと当時話題になったそうです。4,000スクリーンは日本中全部にスクリーンがかかっているぐらいだそう。
公開初日は1位を獲得、でも4日後には圏外。最初に4日間がものすごく期待値が高かった、三浦春馬の新作が出たと。これがもっとエンターティメントのドタバタ喜劇だったら数字が上がったけど、日常ではあんまりありえないミステリアスなものだったから。でもまた、最後があれはどうなったのか?どういう結末なのか?と中国でも話題になったので、そういう意味では一石を投じれたかなと思われたそうです。今、妻夫木聡さんが中国映画に主演えしていて、それが呆れるぐらいのドタバタ喜劇で、惜しみなくエンターテインメントというもの。中国ではそういうものでないとたくさん観てくれないという状況からすると、最初に1位が獲れたことはものすごいと、おっしゃってました。

そういう意味では監督にとってすごく記憶に残る上映だったし、春馬と一緒にいろんな場所、中国の僻地まで行ってキャンペーンをやったことも思い出深いそうです。またその中国のキャンペーンでは、こんな感じで舞台挨拶をすることはほぼなく、映画を観終わった後になぜか監督と春馬とリューシーシーと司会者が表れて、女の子を3人ぐらい並ばせて『双子当てゲーム!』というのをやり、全然、映画のことに触れないのだそうです。(確かYouTubeで見かけた記憶があります…)
そういう不思議なアトラクションをして、観客と楽しんで、ダーツをしたりとか、そんなキャンペーンで、それを春馬と『俺たち、何やってるんでしょうね?』『何やってるんだろうな?』と言いあってたようです。また、すごいホテルに泊まらせてくれるので、そのギャップがすごくて、それも含めていい経験だったとおっしゃっていました。

ファンの皆さんへ監督からのメッセージ

映画ってやっぱりすごいのは、彼がやってきたことすべて、彼自身がここにあるということ。映画すべてが彼、監督はいつも俳優さんたちにそういう想いをもっているようです。
彼じゃないとできないこと、やれないこと、それが大事だと。だから監督は
こんな演技をこんな誰かみたいにとか、お前の殻を破れとか、俳優さんに言ったことはないそうです。むしろ殻の中にいていいと。それが春馬のすべてだったんだとおっしゃっていました。

『この映画を撮っていて、一番、「これは春馬だな~。春馬の繊細さが撮れたな~」と思ったのは、公園での野外映画のとき。
リュー・シー・シーの手をふと、こう掴む。指先を撮る、指先の繊細さやその揺れる、鼓動みたいなものを全部、熱量が伝わって、彼女の手を掴む。演ってみせたところは手しか映ってない。
彼ほど完璧にそれをやれた人はいない。あれがもうすべてです。
奇しくもそのカットを見る度にグッと来るんです。春馬の顔の表情は映したくなかった。でも、そういうことなんです。』

監督がおっしゃいます、春馬にもいろんな想いがあるでしょう、彼の中に。僕らもあるじゃないですか。それを今、状況としてはこうなっているのだけれども、そういう鼓動みたいなものや彼自身の精神みたいなもの、研ぎ澄まされた精神みたいなものがそこにあると言われていました。
その場面を観る度に、彼の表情を想像する、僕らは想像するしていくしかない。彼はこういうヤツだったんだな…と。
でも、映画の中では彼は実際に生きていたわけで、いたわけですよね。彼の存在はこれからは映画を観て感じて行くことになるのだと。

自分が触れてる世界の人たち、向き合うべき人たちと如何に自分たちが、ちゃんとしっかりと向き合えるかというのが、僕がやっぱり彼から学んだことだと思いますとおっしゃっていました。

舞台挨拶後はサイン会

30分間強の舞台挨拶後は、パンフレット購入者の特典で行定監督のサイン会に参加することができました。
一気に130名がぞろぞろと出て、一旦映画館の外まで並んだと思ったら、今度は近隣に迷惑がかかるからと映画館のビルの階段で上の方の階までぐるぐる並ぶという混雑ぶり。私、こういうので並ぶのって、数年前の推しの東京ドームのライブ以来でしたので、すごく新鮮でしたが後からグッタリ来ました(笑)

両隣りの方と少しお話しましたが、私の母に近い年齢のおばさまも同年代の方も、皆さん本当に春活に熱心で聖地めぐりをされていたり、何度も土浦に行かれていたりなど、お話を聞いて感心しきりでした。
こういう皆さんのエネルギーが天外者やNight Diverのヒットにつながったのだと肌で実感しました。本当にすごいです。

そして、順番が来てパンフレットにサインを頂くだけでなく、写真撮影も一緒にして下さるとか。思わず、撮影して頂いちゃいました(笑)

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私はカットしました(笑)ちょぼっと髪の毛が入ってますけど。

今回の舞台挨拶を拝見することができて、本当によかったです。
こうして、一緒に作品をつくられた監督のお話は、俳優三浦春馬のことと彼自身のいろんなことをお話して下さるだけでなく、なんだろう、こうして書いてるだけでその言葉から心か温かくなって、いろんな想いを受け取れる貴重な体験ができたなと感じています。

できるだけ監督のお話をそのまま書きましたので、分かりにくかったり伝わりにくいこともあるかと思いますが、お話を聞いているようなお気持ちで受け取って頂ければ幸いです。
長文におつきあい頂きありがとうございました。

真夜中の五分前、今度はDVDを買って、じっくり観ようと思いますが、あの情景の季節感も味わいたいので秋になって涼しくなったらやってみようと思います。

あの手を握るシーン、良の顔を想像しながら観たいですね。

サポートはすべて、三浦春馬さんを応援するための活動に大切に使わせて頂きます。