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論語が沁みた日曜日

こんにちは。Natsuです。今日は論語の話です。
日曜日、わたしは珍しく家に人を招きました。

別に家に人を入れるのを拒んでいるわけではないのですが、都内からはわたしの家が大分遠いので、わざわざ来るような人はあまり居ません。それなのに、今日はプレゼンの練習のために会社の同期が家に来てくれました。

同時期に研修を受けて、プレゼン課題にそれぞれ取り組んだ同期のAさん。研修はもう終わって実務に取り組んでいるのに、その合間を縫って「もっと知識を定着させたいから勉強に付き合って欲しい」と言うので、わたしは二つ返事で引き受けました。
そして、この勉強会にゴールを設けるべく、もう一度研修時と同じ条件でマネージャーの前でプレゼンをすること、即ちリベンジマッチを提案しました。
ラッキーなことにマネージャーもこの提案を受け入れてくれ、勉強会がスタート。

プレゼンの内容は、とある国際ガイドラインを日本の省令と比較しながら実務を想定しつつ説明するというもの。日本の規制と国際的な規制、それらの共通点及び相違点、実際の対応、違反した場合の措置について等等…の知識と理解、そして基礎的なプレゼンテーションスキルが求められます。

20分間の制限時間に対し、使うように指示されたスライド(文字だらけ!)は約40枚。話す内容の取捨選択から始めなければなりません。

Aさんにコーチ役を任されたわたしは、まず知識のアウトプットとインプットを反復するところから始めました。使用するスライドを投影しながら、そこに書かれているキーワードについて口頭で質疑応答、わからなければ省令の原文を参照して確認、を繰り返すことで、「与えられたスライドの内容や書いた原稿を読むことがプレゼンではなく、伝えたいことをプレゼンするためにスライドを作り原稿を用意している」ことに立ち返ってもらいます。

同時に知識の抜け漏れ・誤解がないかを確認し、定着させていきます。研修時には穴埋めや選択式の(採点が楽な)理解度確認が多かったので、アウトプットとして口頭で説明ができるようになることには結構時間を要しました。

説明するに値する、「キーワード」が何かもAさんが自分でわかるようになる必要があるので、慣れてきてからは「このスライドの中で絶対説明しないといけないのは何?」と尋ねてAさん本人にキーワードを選んでもらっていました。

この段階において、たどたどしい説明だったのが急に流暢になった日がありました。明らかに何かを読み上げている風ではあるのですが、その読んでいる何かはどうやら共通で持っている研修資料ではありませんでした。
Aさんに聞いてみると、「Natsuさんが質問してきそうな用語の定義がまとまってる解説サイトを見つけたからそれ覚えてきた!スライドに載ってないけど〇〇とか〇〇っていうのも答えられるよ〜」とニヤニヤしながら言うではありませんか!
自発的に予習をし、それも指定の範囲を超えて学んで、更にそんな自分を評価してほしいという姿勢。
Aさんが明らかにこれまでの研修時とは違うフェーズに入ったのがわかり、良い循環に乗せて螺旋階段を駆け上がろう!とわたしはその日のAさんを褒めちぎりました。今思うと、学習者であるこのAさんのモチベーションに、コーチ役であるわたしも完全にのせられていました

次に、そのキーワードをもとに原稿を作成していきました。

できるだけ文章を短く、誤解の余地のないように、知っている知識は適切に盛り込みながら、何を説明して何を説明しないかもよく考え、PowerPointのノート欄に発表原稿を書いていきました。

記憶の定着は薄く広く何度も繰り返した方がいいという考えに則り、40枚あるスライドを何往復もするように意識しながら広く浅く何度も行ったり来たりして全体像を考えながら力を入れるところ、抜くところを決めていきました。

わたしも同じ課題に研修で取り組みましたので、どこに重点を置いて説明していくかについてはわたしなりの答えが出ていたわけですが、今回Aさんとディスカッションを経て作った原稿は、面白いことに全く別の部分をしっかりと説明するものとなりました。

プレゼンを我流で作り上げてきたわたしには、「わたしにとっての『教える』は『自分のスタイルを押し付ける』なのではないだろうか」という不安がありました。そのため、今回Aさんからコーチ役をしてほしいと頼まれた時に、自分の教えるスキルを試そうと考え、取り組んできました。

勉強会の途中から、どうやらその不安は自分なりに気をつけることで回避できていそうだとわかってきました。
「わたしは自分のプレゼンではこういう理由でここを掘り下げたけど、Aさんはどう思う?」といった質問に対して、Aさんは自分なりの結論と理由をもって答えてくれるようになり、前向きなディスカッションが成立するようになったのもこの頃でした。

我々には、「いい循環に入った」という確かな手応えがありました。わたしはもともと人を褒めるのが好きではありますが、この頃のAさんの成長には本当に目を見張るものがあり、勉強会の最後には具体的かつ詳細に今日の良かったところをたくさんフィードバックしていました。

そして、モチベーションの維持と作業の進捗のため、決めた期間内はできるだけ毎日、短い時間であっても勉強会を開きました。

そしてリベンジマッチを前にして、Aさんに嬉しい知らせが舞い込みます。なんと、部署内でのステップアップが決まったのです。10名以上いる新入社員のうち、研修後のステップアップのタイミングは人それぞれ。今回の機会に対してマネージャーが何らかの理由でAさんを評価し「選んだ」ことは間違いありませんでした。

Aさんはそれを、リベンジマッチを申し出たモチベーションを評価されたに違いないと受け取り、より勉強会に身を入れるようになりました。

そして発表用原稿は出来上がり、プレゼンの練習をするフェーズに入っていました。Aさんはもともとハキハキと発音ができる方でしたが、原稿を上手く読もうとすると緊張から早口になり語尾が弱くなる癖がありました。
この辺の話すスキルについてもわたしは人に教えてもらった経験も教えた経験もないので、一か八かで「好きな女子アナいる?その人になったつもりで常に口角を上げて読んでみて欲しい」と伝えました。Aさんはミトチャンという方が好きだそうで、次の練習からはミトチャンを意識したという発声で読むようになりました。

ラッキーなことにこれが大当たりで、「明るい表情で口角を上げる!」と留意することで、目の前の文字列だけでなく、自分の外の聴衆に対して意識が向く効果があったようで、話すスピード、強調する言葉の粒立て、はっきりと発音される語尾から醸し出される自信……!といろんな問題が一気に解決しました。ミトチャンすごい。Aさんのポテンシャルもすごい。

とても良くなった旨を伝え、あがり症だというAさんに自信をよりつけてもらうために他の同期の前でリハをすることを提案しました。

Aさんは「なんだか本番も自信を持って発表できる気がする!」とニコニコして帰っていきました。

時間をとって勉強したのも、わたしに声をかけたのも、マネージャーからの評価を得られたのも、全てAさん本人の努力100%によるものです。休日返上とはいえその成長を近くで見ることができ、わたしはとても嬉しい気持ちになりました。

リベンジマッチはこれからですが、勉強会前後でのAさんの変化と成長を思うと、既に「やって良かったなぁ」という気持ちでいっぱいです。自分はプレイヤーだけでなくトレーナーとしても活躍するチャンスがあるかも…なんて考えてしまうほど。Aさんがいつも「Natsuさんは本当に教えるのが上手!先生向いてる!」と褒めてくれるのでわたしまでその気になってしまうという…(※ちょろい)

さて、そんな嬉しい気持ちを日記にしたためていたところ、なんだか既視感がありました。




これ、孔子が言っていたアレじゃ…?


子曰。 

「学而時習之。不亦説乎。 

有朋自遠方来。不亦楽乎。 

人不知而不慍。不亦君子乎。」

論語。


中学の漢文の授業で習ったもの。

孔子(こうし)が言われた。「師の教えてくれたことを学び、いつも繰り返して自分の身につける。なんと喜ばしいことだろう。同じ志をもつ友達が遠くからでもやってきて一緒に学ぶ。なんと楽しいことだろう。たとえこうした生き方を他人がわかってくれなくても、気にかけたりはしない。それこそ君子といえるのではあるまいか。」

引用元:https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/column/kotowaza44

これを学んだ中学生の頃は、書かれていることの意味も、自分が漢文を学ぶ意味も全く分かりませんでした。
でも約10年の時を超えて、片道2時間もかけてプレゼンの練習や勉強のために会いに来てくれる友人に感じる喜びは、こうして忘れられないものになりました。

わたしは退勤後や休日に仕事をするのは嫌い(説明すると長くなるけど本当に嫌いなのとはちょっと違う)ですが、今日これまでの出来事は本当に楽しかったし嬉しかったです。

「これって論語じゃね?」と思い当たる経験も含めて、とっても充実した日曜日でした!

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