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婚姻制度とは何なのか

こんにちは。Natsuです。みなさん、婚姻についてご存知でしょうか。いわゆる「結婚」というものです。

結婚と婚姻の違いはなにかと言うと、「婚姻」は民法上に出てくる法で定められた用語であり、「結婚」は一般的に使われる言葉です。大まかには、結婚と婚姻は同じ意味で使われています。

「結婚」という言葉はあまりにも身近ですが、民法においては「結婚」という単語は一度も出てきません

法律を見ていると、日常的に使われている言葉と法との乖離が目に付きます。例えば、婚姻することを「入籍する」という言い方がありますが、入籍とは「子が父又は母と氏を異にする場合には、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、その父又は母の氏を称することができる」という制度のことです(民法第791条(子の氏の変更))。現代の日本においては、婚姻したからといって既に筆頭者がいる戸籍に夫婦揃って入るわけではなく、夫婦で新しい戸籍を作ります。婚姻することを「入籍する」と表現するのは、市民権を得ているものの、法律的に正しい表現ではないわけです。

では民法に定められている「婚姻」すなわち「現代日本における結婚」とは何なのか、見ていきましょう。なお、民法第4編「親族」は総則、婚姻、親子、親権、後見、補佐及び補助、扶養の計7章からなります。ここで見ていくのは第4編第2章婚姻のパート(第731条〜第771条)です。

婚姻は、戸籍法 (昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。 民法第739条(婚姻の届出)

婚姻の種類・方式は文化や社会によって多様ですが、日本においては法律婚主義(婚姻の成立に法律的手続きを要求する)がとられています。

法律婚が当たり前になってしまうと、他の婚姻様式が思い浮かばないかもしれませんが、法律婚主義の対概念として、事実婚主義、儀式婚主義、宗教婚主義といったものがあります。雑に言うと、(事実婚主義のように)一緒に生活しなくても、(儀式婚主義のように)特別な儀式をしなくても、(宗教婚のように)宗教上の儀式をしなくても、法で定められた手続きさえすれば婚姻することができる、これが法律婚主義というわけです。あら、とっても簡単!現在、ほとんどの立法例が法律婚主義に則っています。

じゃあ婚姻って誰でも勝手にしていいの?というと、そういうわけではなく、いくつか条件があり、条件を満たさない婚姻は、取り消しとなる可能性があります。

一度民法を離れ、日本国憲法第24条を見てみましょう。

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。 日本国憲法第24条

24条では、家庭的生活における個人の尊厳と、本質的男女平等が説かれています。同性婚の議論でよく話題になるのが「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」の「両性」という言葉の解釈です。「男女の合意のみに」ではないんですよね。この両性とは誰なのか、恐らく婚姻をして夫婦になろうとする2人のことですが、その性はどういう組み合わせなのか、というのが論点となるわけです。

第24条、改めて読むと、ううん、いいですねえ。憲法及びそれに立脚した民法で定める夫婦というものが、本質的にフラットな関係にあるんだということがわかります。

余談ですが、夫婦別姓についての裁判で「違憲」かどうか議論されるもとになったのもこの24条でした。

夫婦同氏を義務付ける民法第750条が違憲なんじゃないの?憲法24条の本質的男女平等と矛盾するんじゃないの?という考えなわけです。

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。 民法第750条

結局この考えは、「750条は夫婦のどっちかが改姓してねっていう話なんだから(女性の方が改姓しなさいと言っているわけではないんだから)男女平等を言っている憲法第24条と矛盾しないでしょ」という判決で終わっており、今でも日本は夫婦同氏が(国際結婚を除き)義務付けられています。


さて婚姻の条件の話に戻ります。

では合意した両性なら誰でもいいのかというと、まだ条件があります。

婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。 民法第731条(婚姻適齢)

婚姻は18歳以上でなくてはできないよ、と書いてあります。「え?男子18歳で女子16歳じゃなかった?」と思った方は、2018年の民法改正を思い出してください。成年年齢が18歳に引き下げになっています。これに伴い、男女ともに18歳以上でなくては婚姻できないようになりました。

その他に、婚姻できない条件(重婚の場合、近親者の場合など)もありますが今回は割愛します。

まとめまると、


成年で、お互いが合意していること。


これが、言ってしまえばこれだけが、婚姻の条件です。これさえ満たして、法律上の取り決めに則って婚姻届が受理されれば、婚姻は成立し、社会的に法律的に夫婦となることができます。

つまり、相手がどんな人だとか、相手の家族がどうだとか、どれくらい愛しているかとか、百年先も愛を誓ったかどうか、僕は君の全てかどうか、同じ墓に入りたいかどうか、こどもがいるか、セックスの頻度はどのくらいか、左手の薬指に指輪をしているか、結婚式をあげるのか、そんなことは法律婚の成立のためにはどうでもいいんです

じゃあ、紙一枚でどうにでもなる「婚姻制度」って、一体何なんでしょうか。何のためにあるんでしょうか。


婚姻制度とは、自分の家族を選ぶことができる唯一の制度です。


法的に「親族」でなければできないことというのが、世の中にはあります。一方で、自分の親族を選ぶことは一般にはできません。親も、兄弟も、こどもも、その他親族も、自分で選ぶことはほぼできないのです。

しかし配偶者だけは、自己の意思に基づいて選び、嫌になれば縁を切り家族でなくなることができます。


今回は民法や憲法を紐解きながら、婚姻制度とは何か、法律婚とはどういうことなのかをわたしなりにまとめてみました。そんな法律婚をするメリットは何なのかは、次回以降書いていきたいと思います。

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