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「ロールモデル不在」問題

今年の春、転職活動をする中で人事担当や採用面接担当の方々(ほぼ中堅の男性社員。面接担当が女性だったパターンは一度もなかった)と話をして感じたのは、どの企業も「これから出産を経験するような若手女性社員のロールモデルとなるような女性管理職のロールモデルが自社にいない」「女性管理職を増やしていきたい」という課題やニーズがあることです。

何か尖った専門知識は特にない44歳の私が、複数企業から内定のオファーをいただいたのは、広く浅いITスキルやIT関連プロジェクトの推進した経験や必要最低限のポテンシャルがあったというだけでなく、
・女性ですでに管理職経験があり、管理職としてやっていけそう
・出産して育児と仕事の両立経験があり、若手女性社員のよきメンターやロールモデルになれそう

というジェンダーやライフイベントと仕事の両立という、どんなに上の役職であっても、面接をされた男性社員の方々自身ではどうやっても出せないバリューや付加価値を私が提供できると評価されたことも理由の1つだと思います。

そういう意味では、女性が育児をしながら仕事を続けることは、自分のキャリアや転職のデメリットではなく、むしろ強みになると思って、自信を持ってやっていけばよいです。

また、もしこれを読む40代で管理職経験のある女性の方がいらっしゃったら、転職市場では貴重な存在になるので、少々畑違いの領域であっても転職でキャリアアップする狙い目かもしれません笑。

ロールモデルとは

ロールモデルとは、社員が将来において目指したいと思う、模範となる存在であり、-- (中略) --(スキルだけでなく)仕事とライフイベントの両立や業務への取り組み姿勢など考え方やあり方についてよい刺激を受けることができる存在でもあります。  -- (中略) -- ロールモデルは必ずしも一人とは限らず、例えば、発想の豊かな人、交渉能力の高い人、事務処理や緻密な仕事に長けている人など、自分が不足している知識や身に付けたい態度・行動に応じて、複数の人をロールモデルとすることもできます。

「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」
(厚生労働省)

平成24年に「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」(Link: WLBマニュアル_表紙 (mhlw.go.jp)) が出てから10年たちますが、今でも「ロールモデル不在」問題は解消しておらず、結婚や出産して仕事を続けられるイメージができない(仕事が忙しいコンサル業界では特に)といった将来のキャリアに関する漠然とした不安を抱える若い女性はあとを絶ちません。

また、最近はまだ子供を持つ前の若い男性も、上司やその上の上司は、みな家庭より仕事優先でやってきた男性が中心で、自分は育児や家庭にもコミットしたいが、実際に家庭と仕事を両立しながら出世した男性社員がいない、マネージャー以上になると業務時間が長くなりプライベートとの両立がしずらくなるので昇進したくない、という若手の男性社員もいます。

反面教師的ロールモデル(=非ロールモデル)

お手本となるようなロールモデルはいないが、「反面教師的」ロールモデル(すごいけど、この人みたいにはなりたくない or  なれないと周囲から思われてしまう人)であればいる、という人も多いのではないでしょうか。

  • 出世はしているが中身は男性の女性(オールドボーイズネットワークに受け入れられるために戦略的に根回しをしたり飲み会や男性中心の接待的な会合にも積極的に参加)

  • 出産後も仕事のペースを落とさず働き悲壮感・疲労感が出ている(子育てをベビーシッターや両親など外部リソースに頼るか睡眠を削り、残業もいとわない)

  • 仕事はすごく優秀で頭も切れるが近寄りがたい

などです。上の3つの例が男性だったとしても同じ話で、女性に限った話ではありません。

いずれにしても、それに近い方々を否定するつもりは全くありませんが、「ものすごく大変そう」だったり「魅力的に感じない」人たちが上にいると、自分自身がプロモーションしてさらに組織に貢献していきたいという思いを持つのは難しくなります。

今求められているロールモデルとは

男女ともに、自分の時間すべてを仕事にフルコミットすることを理想としない価値観が広がりつつある中、

  • プライベートの充実と仕事でのスキルアップや組織への貢献を両立

  • 管理職になっても楽しみながら仕事をする(疲弊しない)働き方

  • 見た目や人間性も魅力的

  • 自分にも手の届くレベルや経験を持つ(完璧で優秀すぎない)管理職

の上司やロールモデルが増えれば、若手社員にとっても、この会社で働き続けたいと思うモチベーションになるのないでしょうか。

人材が多様化する中、完璧なロールレベルというのも存在しないので、性別や役職を限定せず、Aさんの〇〇の部分は尊敬しているから参考にしよう、Bさんの〇〇のやり方は取り入れよう、というように、一人を「モデル」化せずに、複数の人の考え方や振る舞いを「ロールパーツ」として取り入れるのも良いですね。


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