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インプットとアウトプットをつなぐ「咀嚼力」

人間であれば誰しも、家族や友人との会話や、仕事の会議で意見を求められたときの回答など、インプット(相手の発言)に対して、その内容を理解、解釈した上で、アウトプット(自分なり回答)をする、ということを日々行っているはずです。

その、インプットとアウトプットをつなぐ理解力のことを、私は、「内容をかみ砕いて、本質を自分の腹に落とす」という比喩から、コミュニケーションスキルとしての「咀嚼力」と表したいと思います。
(※名づけ親は、私です。リアルの咀嚼力(歯で噛む力)も大事ですが、言葉の咀嚼力も大事)

言葉の「咀嚼力」には、
・抽象化と具体化を行き来する思考法
・本質を類推するための、経験や感情の様々な「引き出し」
・思考を言語化するための、語彙力
が必要です。
これらは、コツコツ日々の生活や仕事で意識して積み上げていくものなので、一足飛びに向上させるミラクルなTipsがあるわけではありません。

さて、私がこの記事を書いたのは、自分の瞬発的な理解力と、それを発揮した上での社内会議、対クライアントとの会議、インタビューなどで当意即妙なやりとりをすることに苦手意識、コンプレックスがあるからです。

私は、もともと弁が立つタイプではなく、人の話を聴いている方が好きな性格であるにもかかわらず、今はコンサル会社でよく続けられているな、と思いますが、会社の性質上、仕事では、クライアントの経営課題や、IT・セキュリティの課題、さらにはお客様自身も課題としてまだ認識されていない根っこの課題を追求し、その解決に向けた道筋を示すことをミッションとしているため、自分のまわりで、常に高い思考力や理解力を備えた人たち同士の会話を聞いているので、余計に自分のだめさ加減を実感します。

自分の瞬発的な理解力、要約力を高めて、会議での難解な会話にも取り残されずに、できれば自分の視点からの考えや意見を言いたい、と思って手に取った本が、伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓郎氏の著書
『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』
『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』
の2冊です。

「要約力」とは、インプットとなる情報から本当に言いたいこと、エッセンスを抽出してアウトプットする力で、アウトプットするために必要なのが、インプットの「理解力」です。つまり、要約するには、その前提として、内容を深く理解する必要があるので、この2冊は、書籍内でも兄弟本として位置づけられています。

本の感想としては、「理解力」方が、どちらかというと初心者向けで、「要約力」の方が理解力を理解した人向け、中級向け、という印象です。

「要約力」の書籍内では、伝えるときの言い過ぎ、言わなさ過ぎ、はいずれもNG、とされています。「9割捨てる」のタイトルの通り、「本当に言いたいこと」の幹にしぼり、枝葉の部分はそぎ落として伝えるか、幹を伝えた後に補足的に付け加える方法が書かれています。

また、「理解力」の書籍内では、要約力と同様、幹→枝→葉の順番で理解することが重要と書かれています。何についての話なのか(概要)、何のためにあるのか(背景や目的)、の幹を理解し、その後、詳細や具体例の枝葉を理解します。鳥の目(上から全体を俯瞰して見る、相手側から見る、ゴールから見る)の視点と、虫の目(詳細)の視点を行き来することで、より深く理解することができます。また、常に自分が「理解したつもりになっている」可能性を認識し、その壁を超えることで、より深みに踏み込むことができる、とされています。

物事を理解するときに、すでに持っている情報を活かして「〇〇の世界でいう△△か」と類推して理解することがあります。その、すでに持っている情報のことを、書籍内では「理解の箱」と呼んでいます。私は、「会話の引き出しをたくさん持っている人」という言い方もあるので、「引き出し」の方がよりイメージしやすいと思いましたが、その引き出し、あるいは理解の箱を増やすことが、理解力を高めるために重要だとされています。

私も、クライアントとの会話では、これまでのどんな些細な経験でも、詳しくなくてもかまわないので、自分の持っている経験や知識の引き出しを最大限に活用して、できるだけ価値を感じていいただけるコミュニケーションを心がけています。「10年前に、当時はあまりやる気にならなかったけど、あの仕事をやっておいてよかったー」と今になって点と点がつながることがよくあります。

コンサル会社で働いた5年間で、以前よりも咀嚼力は鍛えられたと思いますが、結局は「慣れ」と「訓練」しかないと思います。これからも、本や情報、実際の体験、映画などのインプットを得たら、それを咀嚼して何らかの解釈や付加価値を付けたアウトプットを出す、そのフィードバックをもらう、のサイクルを続けることで、自分の引き出しの数を増やし、広さを広げて、要点を的確にとらえて伝える「咀嚼力」を高めていきたいと思います。


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