あおちゃん、ごめんなさい。

あおちゃんはいつもニコニコしている。
ニコニコしてるから僕も一緒になってニコニコしていた。
あおちゃんはいつもパパとママに可愛がられてた。だから僕も可愛がってあげてたんだ。
でも、あおちゃんはいつでも自分勝手でわがままですぐ泣くし、僕のおもちゃもすぐ欲しがる。
僕が大事にしてた車のおもちゃを貸してあげたのにヨダレだらけでベトベトになって返ってきた。
だから僕はあおちゃんに怒ったんだ。
僕のおもちゃだよ!ヨダレだらけにしないで!って。
そしたら、ママが僕の事を怒るんだ。
だから僕は「だって僕は悪くないよ?あおちゃんが僕の大事な車のおもちゃをベトベトにしたんだよ!だから怒ったんだよ!」って言ってもママはあおちゃんは小さいから仕方ないのって言って僕のお話聞いてくれない。
だから、僕は「あおちゃんもママも嫌い!」って言って、おうちを飛び出したんだ。
あおちゃんが来るまでは、ママはもっと優しかったのに、あおちゃんが来てからはあおちゃんばっかり優しくする。僕には抱っこしてくれないのに、あおちゃんには抱っこしてあげてる。あおちゃんが泣いたらあおちゃんのところにすぐ行くのに、僕が怖い夢を見てもあおちゃんのところにいてる。
僕よりもあおちゃんの方が好きなんだ。
きっとそうだ。
僕はおうちを飛び出して、公園まで走ってきちゃった。ママからはひとりで遊びに来たらダメって言われてたのに、公園までひとりで来ちゃった。
周りには誰も遊んでない、夕方の公園。
おうちに帰りたいけど、帰れない。
僕は公園のブランコに座って、ずっと下を向いてた。
ママからお外に出る時はクツを履きなさいって言われてたのに、クツを履かずに来ちゃった。真っ白だったクツシタが茶色く汚れてる。おうちに帰ったらママに怒られるんだろうなぁ。ううん、もしかしたらあおちゃんもママも嫌いって言ったからおうちに入れてもらえないかもしれない。
そう思うと僕は寂しくなって来た。
ママ、ママって口の中で言ってみた。余計に寂しくなってきた。急にママとパパとあおちゃんに会いたくなってきて、僕の目から涙がポロポロ出てきた。
でも、どうしたらいいか分からないんだ。僕の大好きなクルマをヨダレでベトベトにされたのも嫌だし、ママがあおちゃんにばっかり優しくするのもなんだかモヤモヤした。
でも、僕もあおちゃんが可愛いし、ホントはあおちゃんと遊びたい。あおちゃんもママも嫌いじゃないし、大好きなのに、僕は嫌いって言っちゃった。どうしていいか分からなくてブランコでしくしくしてたら、急に暗くなった。急に暗くなって、怖くなったから、僕は目をギュッてした。
ママ、パパ助けてっていっぱい、いっぱい心の中でお願いしたの。
そしたら大きな手が僕の頭を優しく撫でてパパの声がした。「心配したぞ」ってパパの声が聞こえたんだ。
僕は急いで顔を上げるとパパがいた。
夕日の前にパパが居て優しく僕の頭を撫でてくれていたんだ!
僕は嬉しくて大きい声でパパって言って泣いちゃった。だってすごく嬉しかったんだもん。
それからパパは僕を抱っこしてくれて、一緒に公園のブランコに座った。ゆっくり揺れるブランコに乗りながら、僕はパパにさっきの事を話した。
あおちゃんにクルマのおもちゃをベトベトにされた事、ママに怒られた事、そして嫌いって言っておうちを飛び出した事。
パパはゆっくりお話を聞いてくれていた。最後まで聞いてパパにどうしたらいいから聞いてみたんだ。そしたらね、パパは「ソラはほんとにママもあおちゃんも嫌い?」って聞かれた。僕は好きって言った。そしたらパパは「ママもあおちゃんもソラのこと好きだと思うよ。ただ、あおちゃんはまだ赤ちゃんで遊び方が分からないんだろうね。だから車をベトベトにしちゃうんだね。」って言われた。「ソラも急にお兄ちゃんになったから、あおちゃんとどう遊んだらいいかまだ分からないよね。それにママもパパもソラが大きくなってお兄ちゃんになってくれたと思ってたから頼りすぎてたね、ごめんね。」ってパパに謝られた。
「ソラも少しづつお兄ちゃんになって、あおちゃんと一緒に遊べるようになってあげて欲しいな」ってパパはまた優しく僕の頭を撫でた。
「パパ。僕、ママとあおちゃんにごめんなさいしたい」ってパパにお話した。
パパはまた優しく撫でて「じゃ、おうちに帰ろうか」って僕を抱っこしたままブランコから立ち上がった。
パパに抱っこされて、僕はギュッてパパにした。だって嬉しかったんだもん。
そのままおうちに帰ったら、ママは泣きながら僕をギュッてしてくれた。泣きながら心配したんだからって怒られた。怒られたのに暖かくて優しいママのギュッが嬉しくて僕も泣いちゃった。
泣きながら僕はママにごめんなさいした。ママも僕にごめんなさいしてくれた。
僕はもっとママにギュッてして欲しかったけど、あおちゃんに会いたかった。
だから僕はあおちゃんのところに行って「あおちゃん、ごめんなさい。」って言ったんだ。
そしたら、あおちゃんはニコニコしていた。パパもママもニコニコしていた。
だから僕もみんなと一緒にニコニコした!




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こちらは朗読用に書いたフリー台本です。
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