文学部のユーモア
学生時代、文学部に在籍していた。
「文学部」といっても範囲は広い、オーソドックスな近・現代文学を専攻する者もいれば日本語学を専攻する者もいて、その学びは多岐に渡る。
とはいえ文学部の学生は程度に差はあれど、基本的に本が好きというのが共通していたと思う。
思い返してみれば入学して最初に書かされた自己紹介カードにも当たり前な顔して「好きな本」の項目があった。
なんだかここでスラスラと書けないような人間はお帰りくださいと言わんばかりの雰囲気を感じた。
一瞬、「通ぶろうかな」などとよくない思考が過ぎったりもしたが、その手は村上春樹の「バースデイ・ガール」を無難に書いていた。
とまあ、私のエピローグはここまでにして本題に入りたいと思う。
「文学部」というコミュニティは割と変人を寄せ付ける何かがあった、それも厄介なのが見かけは普通なのである。
あまり適切な表現ではないかもしれないが、一般的に言う「変な人」というのは見た目から一線を画していることが殆どかと思う。
しかし文学部の連中はというと普段は上手く真人間に擬態しているのだが、ふとした拍子に「変」なのである。
何を言っているのか分からないと思うが、本当にこれ以上の表現が見当たらない。(一応言っておくと、ここで言う「変」というのは褒め言葉に近い)
そんな変人が集まるからこそなのか、「文学部ならでは」みたいなユーモアがかなり散見されるので今回はこれらを思い出しながら紹介したいと思う。
下手をすればただの内輪ノリを公開するだけになるのだが、「かなり薄いあるある」くらいの気持ちで読んでもらえたらいいのかなと。
◆文学部のユーモア
①田山じゃん
ここでいう田山は小説家の「田山花袋」を指す。
田山花袋は一言でいうと「フェチズム」に特化した作風でお馴染みの作家だ、知らない人向けに代表作「蒲団」から一文抜き出す。
あらすじは端折るが、こちらは36歳のおっさん「時雄」が19歳の女の子「芳子」のリボンや布団の匂いを堪能するというなんとも事案な一幕となっている。
まあお察しの通り「変態」なのだ。
文学部では田山花袋が変態のシンボルとして名を馳せており、変態的な発言をした者に「田山じゃん」とツッコむのがお馴染みの流れとなっていた。
文字に起こすと途端に何が面白いのか分からなくなるが、身内ネタなんて大体そんなものだと思うので気にせず次にいこう。
②ノックスの十戒だよ
これはもう見たまんまなのだが、ノックスの十戒というのが「推理小説を書く上で守らないといけない10個のルール」のことで、そこから転じて「だめだよ」の意で使われるようになった言葉だ。
使用例
A「明日自主全休しようかな」
B「ノックスの十戒だよ」
いや、じゃあだめだよでいいだろ。
③江戸川乱歩
推理小説の話をした流れでこちらも紹介したい。
江戸川乱歩という推理小説家はみんな名前くらい聞いたことあると思うが、こちらは「エドガー・アラン・ポー」というアメリカの小説家をもじってできたペンネームだ。
これ、「すごくセンスがいい」ということで我々もそれに乗っかる形で「自分の本名をペンネームと仮定した場合、元となったであろう名前で呼び合う」というノリが暫く続いていた。
文字だけだと意味が分からないと思うので「山本 隆(仮名)」を例に挙げて説明する。
「山本 隆(やまもと たかし)」→「ヤムメイト・テイク・シット」
つまり、本名の山本隆をペンネームとした場合、「ヤムメイト・テイク・シット」という作家をもじった、という体で生活するということだ、当然我々も気軽にヤムメイトと呼びかける。
いや、何が楽しいんだよこれ。
軽い気持ちで書き始めたが、なんだか文学部のネガキャンにしかなっていない気がするのでこの辺りでやめておく。
思えば大学に入る前から卒業した後でもずっと「文学部は無くなるかも」と言われ続けてきたが、こんな逸材揃いの文学部を野ざらしにするのは聊か勿体なさすぎる気もする。
パンは単体で空腹を満たす存在だが、水が無ければ喉が渇くし充分に咀嚼することができない。
「文系」も「理系」も、どちらかが欠けてしまうと成立しないのだ。
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