えすてる

薬学生 薬学・写真・小説・エッセイ

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マガジン

  • 解放のあとで

    • 28本

    今秋、同時発行の『前衛アンソロジー2 解体する文学』連動企画。 投稿者が毎週2人ずつ「α・β」に分かれ、「コロナ禍」下での近況とその都度の話題について意見を交わします。

最近の記事

解放のあとで 十四通目 β

幸村さんへ  僕が綴る書簡はこれで最後です。今月で書簡「解放のあとで」は終わり、毎週二通の書簡がインターネットの片隅に投函されるのを楽しみに待つことがもうなくなるのだと思うと寂しいですね。思えばこの書簡が始まったのはコロナが最も猛威を振るっていた時期と記憶しています。未知のウイルスに戸惑い、恐怖と不安が覆った社会では情報や信条、感情が錯綜し人々の対立が目立ちました。その中でさまざまな社会問題が表面化し、混沌とした感情の坩堝に僕たちは放り込まれました。多感にならざる得ない状況

    • 解放のあとで 十通目 β

      2020年8月20日 メルキドさんへ  書簡の投稿が遅くなり誠に申し訳ございません。メルキドさんから書簡を受け取ってもう二週間が経とうとしています。夏も後半戦を迎え、心なしか日が沈むのも早くなったように感じますが、この暑さはいつ和らぐのでしょうか。  さてメルキドさんの書簡を拝読させていただきましたが、二十年前の写真や映像技術の肌感を持っている人は素直に羨ましいと思いました。今僕たちの生きる時代は主にスマホの普及により写真や映像の価値が暴落しています。写真や映像は研ぎ澄ま

      • 解放のあとで 六通目 β

        2020年7月19日   幸村さんの書簡を読ませていただきました。コロナ禍においての「自粛」とヒステリーの症例として紹介される男の「自粛」の類似点は非常に興味深く思いました。家政婦に鍵を委ねる行為が「自粛」を望みつつも行政に判断を委ねる市民の姿と重なる点もなかなか面白いです。  さて新型コロナの話は早々に切り上げて、マイノリティ的未来を思考することの可能性や意義について言及していきたいと思います。マイノリティ的未来は二種類に分類できると思われます。  第一に技術的マイノリテ

        • 解放のあとで 三通目 α

          2020年6月19日  古谷氏の書簡を読ませていただきました。思想やジャーナリズムの関係性についての記述が非常に興味深かったのですが、この大きな流れを読み解くために文献に当たるのはいささか骨が折れそうでお話だけでも聞きたいと贅沢なことを思っている次第です。また「差別」の裏に潜む無意識や構造、マジョリティとマイノリティの断絶について考えさせられました。本書簡で拙い文章ながらもそれらの考察をしましたので返答になれば幸いです。  今日から様々な規制が解除されます。一部の首都圏や

        解放のあとで 十四通目 β

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        • 解放のあとで
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        記事

          ボルネオ

          「これらは恐らく違法伐採されたものでありまして海外に輸出されるのでしょう」 ガイドは大型のトラックに何本も載せられた20m程度の木材を指して言った。僕らはエコツアーという形でボルネオに来ていた。ボルネオの自然を体験し生き物や自然環境の保護の重要性を教わる。僕らはバスの移動中たまたまトイレ休憩として停車した場所でそのような話を聞いていた。木材を載せたトラックは何台か停車していて、日本から遠く離れたマレーシアで大量の木材が伐採されていることを実感する。やっと夫の浮気現場を押さえた

          ボルネオ

          日本的美の探求1

           高校の現代文の授業、あまりに授業が退屈で教科書の他の文章を読み漁っていた。そして、私は谷崎潤一郎の随筆「陰翳礼讃」に出会う。「陰翳礼讃」は日本の伝統美の本質をついた卓抜な文明批評と言われているが、彼は日本的な美は陰翳にあると述べている。 “西洋人は食器などにも銀や鋼鉄やニッケル製のものを用いて、ピカピカ光るように磨き立てるが、われわれはああいう風に光るものを嫌う。われわれの方でも、湯沸かしや、盃や、銚子等に、銀製のものを用いることはあるけれども、ああいう風に研き立てない。か

          日本的美の探求1