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新しい本を買いに行こうかな。

小さな窓から光が矢のように顔を射す。
鬱陶しい光。
朝、心地よく目覚めたことなど、ついぞ記憶にない。

重たい体を無理矢理に持ち上げて、ノロノロと洗面所へ向かう。
昨日風呂に入っていなかったことを思い出して給湯器を点ける。
熱いシャワーを浴びて、ようやく意識がはっきりした。

最近、歯磨きをしているとイライラしてくる事がある。僕はあと何回歯磨きをすれば良いのだと、そんな途方もない問いが思考を掻き混ぜる。
髪を整え、装飾と新鮮さを極限まで削ぎ落とした服を着る。
IQOSをなんの感慨もなく吸いながら、持ち物を整え、鞄に詰める。
ゴミ袋と鍵を手に持って家を出る。
「つまんねえな」と思う。


大学が楽しすぎたのかな。
あの頃の記憶がこびりついて離れない。
好きな人と好きな物事に目一杯時間を使うことができる、自分達が一番楽しいんだと信じていた毎日。
思いながら、電車が来るのを待つ。

3分待てば、比較的空いている当駅始発の電車が出る。
それなのに、どうして後ろの駅からやって来た、ぎゅうぎゅうに混んでいる電車に乗り込むのだろう。そんなに生き急いで、辛くない?と問うてみたくなる。
辛くないのかな。いや、辛いだろ。
この間、テレビで誰かが、「辛いなら逃げればいい」と言っていた。はは。


会社では、”ワクワクしながら楽しく働いている人”、”責任感を持って勤勉に働いている人”、”家族のために一生懸命働いている人”、”金のため、出世のために働いている人”とかがいる。でも、僕はどれも当てはまらない気がする。
僕は、”なんとなく働いている人”かな。

最近の若者は無気力だ、なんてどこかで聞いたことがある。
夢もない、野望もない、出世欲もない、等々。
流石に、若者で一括しないでほしい。夢とか野望とか出世欲とか、持ってる若者割といるよ、おじさん。
それは、僕とかの話。


「彼、競馬場の歯がないおじさんみたいな笑い方する時があってちょっと心配」
と、言っている人がいた。
心配してあげているらしい。
競馬場の歯がないおじさん、あなたより楽しそうに笑うよ。勝った時とか。


会社でできた数少ない友達が、
「夏休み取ったら心の棘が”回復した”」
と言っていた。
心の棘が回復って笑
僕はこの表現がすごく好きだと思った。
棘がないと、自分が自分じゃない気がするよね。
引っかかりがなくなったら、思考が全部みんなと一緒になっちゃう気がするよね。


今日も疲れた。明日も同じ。
あ、いや、ストックが切れたし、新しい本でも買いに行こうかな。


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