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005 つまらない女です

中学3年の頃だった。
休み時間の度にクラスに来る野球部の男子がいた。

どうやら私のことを好きだという。
もちろん悪い気はしなかった。

ある日の昼休み、呼び出されて告白された。

ちょうど大好きだった一つ上の先輩が卒業し
特別好きな人のいなかった私は
「わたしでよければ」とOKした。

その日から一緒に下校をすることになったけど
初めてのお付き合い
いままで接点のなかった男の子
何を話していいかわからなくて。
でもこんなもんかなと思っていた。

何回一緒に帰っただろう。
野球部くんが
「おじいちゃんの具合が悪い」という理由で
一緒に帰れなくなったと人づてに聞いた。

そしてそのまましばらく時が流れ
本当の理由を知ることになる。

「つまんない女だから」

彼は友達にそう話していたというのだ。

あれだけ毎日通い詰めていた彼に
数回の下校で嫌われてしまうとは
私はどれだけつまらない女なのか。

その後の人生で彼に貼られたレッテルは
なかなか剥がれなかった。

……そして時は過ぎ30代での同窓会。

私を見つけ呼び捨てで名前を呼び
馴れ馴れしく隣に座ってきた彼は
「俺たち付き合ってたもんな〜」と一言。

「つまらない女だから捨てられたけどね」
「……」

そそくさと逃げていった。

うん……確かに私はつまらない女だ。

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