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キリンと麒麟

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「きりん」は不思議な言葉だ。
カタカナと漢字、どちらで書くかによって動物が変わる。


(1)キリン=麒麟?


子どもの頃、ビールのラベルに描かれた生き物が気になって
晩酌中の父親に尋ねた。

「これは麒麟だよ」

これがキリン…?
動物園にいるキリンと全然違う。
幼心に混乱したことを覚えている。

あれから数十年。
キリンと麒麟の関係、ついにその答えを見つけた。

(2)「麒麟」の正体

 キリンの名前の由来となったのは、古代中国の神話に現れる伝説上の霊獣「麒麟」。ビールのラベルでお馴染みの、あの霊獣である。
 中国神話の世界では、麒麟は「慈悲深い王が世の中を支配しているときに必ず姿を現す」と伝えられている。眉間にシワが寄った恐ろしげな見た目に反して、平和を好む穏やかな性格をもち、吉兆を現す神聖な生き物だ。

郡司芽久 著.キリン解剖記.ナツメ出版,2019,p.029.

そうか、「麒麟」は伝説上の生き物なのか。
慈悲深い君主がいるとき限定で現れるのなら、見かけないのも納得。
そういえば、大河史上最もさわやかな明智光秀も同じことを言っていた気がする。

(3)日中韓それぞれの「キリン」の呼び方

 日本や韓国では、首の長いあの動物のことを「キリン」と呼ぶが、麒麟発祥の地である中国では「長頸鹿(チャンチンルー)」と呼んでいる。
実は、中国で動物のキリンのことを「麒麟」と呼んだことがはっきりと確認できるのは、たった一度きりである。

郡司芽久 著.キリン解剖記.ナツメ出版,2019,p.030.

文献で確認できるのはたった一度きり!
それでも日本と韓国では現在に至るまで「キリン」と呼びつづけ、いいだしっぺの中国では他の名前をつけた。いったいなにがあったのだろう。

日本語と中国語の違いで考えると、文字に原因があるかもしれない。

漢字・ひらがな・カタカナを使う日本語では、表記する文字の種類でどちらの「きりん」なのかを区別できる。

しかし、中国語の漢字では書き分けできない。
「麒麟」という文字を見ただけでは、神話のほうなのか首が長いほうなのかわからない。
そのため、見た目を想像しやすい名前を
新参者に与えたのではないだろうか。

残念ながら、韓国語の事情はわからない。
詳しい人がこのノートを読んでくれていたら、ハングルだけで「きりん」を区別できるか教えてほしい。

(4)「キリン」命名のひみつ

明(1368~1644年)の時代、アフリカに遠征した武将・鄭和は、ケニアからキリンを持ち帰り、お仕えしている永楽帝に「これが‟麒麟″と奏上し、キリンを献上したそうだ。つまり、「あなたさまの善政のおかげで麒麟が現れました」というゴマスリのようなものだったのだろう。

郡司芽久 著.キリン解剖記.ナツメ出版,2019,p.030.


キリン命名の由来がゴマスリだったかもしれないなんて!

面白い。

けれど、皇帝という人は

「そうか、これが麒麟か」

とすんなり納得するだろうか。

初めて見る首が長い生き物と伝説の麒麟の絵を見比べて、

「何言ってんの?見た目全然違うじゃん」

とならないだろうか。

あの時代の偉い人には残酷な人がかなりいたはずだ。下手なゴマスリは命取りではないだろうか。

(5)ステキなゴマスリ


とはいえ、未知の生き物を善政の証である幻の動物として紹介するのはセンスがいいと思う。

きっと鄭和さんは頭が良くてお仕事ができる人だったのだろう。

このゴマスリ、私も使わせてもらおう。

いつかいい上司に出会ったとき、「麒麟がきた」の一言とともにじゃがりこまたは東京バナナを差し入れしよう。

伝わるかな。
そんな上司に出会えるといいな。

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