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第6話Part6

 とある町の路地裏。前時代に取り残されたかのような古びた道に、その扉はあった。扉の目の前に佇んでいた長身の男は、今にも瓦礫と化してしまいそうなドアノブをゆっくりと右に回していく。
 そうして開かれた扉の内部は、驚く程に清潔で、外からは想像もつかないほどに洗練されていた。塵一つ落ちていない新品の床を、男の足が優雅に踏みつけていく。やがて男は、怪しげな薬品が立ち並ぶひとつの部屋へと辿り着いた。

「いらっしゃいませ、デザストル様」
「こちらが研究の成果です、デザストル様」

男──デザストルの来訪と共に、部屋の中から白衣を着た二人の人間が姿を現した。片方はきっちりと髪を結わえた真面目そうな女性。もう片方は、縮れた髪の毛で目元が隠れている、不気味な男性。デザストルは、その二人を順に見下ろすと、口の端を引き上げて微笑んだ。

「ご苦労様です。『アンフェール・グレーヌ』の改良、スキホーダイの生体研究、どれも順調に進んでいますね」

男性から差し出されたデータを流し読みしながら、彼は満足気に感嘆の声をあげる。

「【新型のスキホーダイは、『アンフェール・グレーヌ』の使用者の魔力を奪うことで、より強力に、効率的に環境破壊を進めることが可能となった。】……ほう、これは良い」

口元に手を当て何度も頷くデザストルを目にし、男性の顔が徐々に歓喜を含んだ表情へと変わってゆく。

「魔力を持たぬ使用者についての対策も、こちらに纏めてあります」

男性は、まるでテストで100点を取った子どものように嬉しそうに、もうひとつの書類を差し出した。