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第2話Part4

「さて……もうそろそろ出てきたら、ポム?」

 レザンが声をかけると、ふわふわとした赤い何かが、小さくぴくりと動いて、次いで中から羊のぬいぐるみのような妖精──ポムが飛び出てきた。

「う、レザンの鞄の中に入ってたの、ばれてたポム……」
「当たり前でしょ? この僕が気づかないとでも思った?」
「確かに……って、その言い方なんかムカつくポム!!」
「あはは、だって本当の事だろ?」

 ポムはレザンにとって、長く慣れ親しんだ友人だった。気心がしれている中だからか、まつり達と話していた時のような、優しさと思いやりの溢れた少年の面影は今の彼にはなく、からかいを含んだ笑顔を見せていた。
 その自信が、彼の絶対的な実力の元に裏付けされているものだと知っているポムは、レザンを認めつつもどことなく不機嫌そうに頬を膨らませた。

「くぅ……! それで、そんな賢いレザン様が、プリキュア達に『あの事』を言わなかったのは、なにか理由があるのですかポム?」

 普段、二人きりの時には使わないようなわざとらしい敬語でツンと問いかければ、レザンは困ったように眉を寄せた。

「ふふ、ごめんごめん、拗ねないでよ」

 大袈裟に謝ると、ポムは機嫌を戻したようだった。レザンはほっと息をつくと、フェンス越しに町の風景を眺めながら口を開いた。

「理由ね……ただでさえ大変な状況下にいるあの二人、特にまつりを、これ以上混乱させたり悲しませたりしたくなかったから、かな」

 太陽の逆光のせいで、ポムからレザンの表情は見えづらくなっていた。けれどその時、一瞬だけレザンが悲しそうに笑ったのを、ポムは見逃さなかった。

「ここからは真面目な話。ポム、ちゃんと聞いてね?」
「もちろんポム。その様子だと、ほとんどわかってるポム?」

 真剣に頷いたポムに、レザンも信用しきった態度で頷き返した。

「ああ。この二週間辺りで、ほぼ分かってきた。単刀直入に言うと、この学校に、カプリシューズの回し者……『潜入捜査員』がいる」