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第5話Part6

「今までは、君たちの決意と、僕の覚悟、双方が一致していたから、君たち4人は変身することができた。でも、まりあさんの場合は違った。彼女はあの時、モーヴェの言葉に唆され、気持ちが揺らいでいた。そして僕の方も、彼女の手を取る覚悟が出来なかった」

 そっと話し出したレザンの声に、ゆららはじっくりと耳を傾ける。あの時のレザンのことをことを思い出そうとしても、まりあの方にばかり気を取られていて、なんだか朧気になってしまっていた。

「それは、どうしてなの?」

 聞かせて欲しいと強く願う思いが、言葉となって口を伝う。レザンは、その真面目な面持ちを見て、信用したかのように頷くと、そっと息を漏らした。

「彼女は恐らく、炎を操る太陽のプリキュアだ。僕は、彼女が力を手にする瞬間を、最後まで見ていなければならなかった。……でも僕は、火を見るのが怖いんだ」
「レザンが、新たなプリキュアの力を拒絶したってこと……?」

 なぜ火を見るのが怖いのか。そこまで掘り下げることは、今のゆららには叶わなかった。けれど、いつかきっと話してくれると信じながら、彼女は解決策を探る。レザンは、そんな彼女の問いかけに、悲哀に満ちた視線を返した。

「そういう事になる。僕、王子として失格だよね。自分の恐怖を押し殺す事が出来なかった」
「そんな事無いわ。あなたは強い。強い人よ」

 そんな風に言うのは、やっぱりレザンらしく無かった。間髪入れずに声を上げたゆららを見て、レザンは一瞬目を丸くする。そして、ゆららに向かって何かを言おうとしたその時、もうひとつの溌剌とした声が、静かな部屋の中に響いたのだった。