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第5話Part9

 暫くは穏やかな談笑の時間が続いた。そうして空が暗く始めた頃、ポムは窓の外をちらりと見て、そっと立ち上がる。

「……あ、そろそろ干してたお洗濯を取りに行かなきゃ! 皆、手伝って欲しいポム~!」
「了解! 」

 病み上がりのレザンを除いて、少女たちは一斉に階下へと降りる。ポムの指示に従って、風になびく洗濯物の取り入れが始まった。

「大きなシーツは2人で運ぶポムー! ぬいぐるみは形を崩さないようにするポム!」
「ぬいぐるみ、思ったより沢山あるんですね。まさか王子先輩、本当にぬいぐるみコレクターなのでは……!?」

 うさぎにくまに犬に猫、多種多様な動物が洗濯バサミで吊るされている姿を一瞥し、あすなはムムっと顔を顰める。すると、誤解を解くため、すかさず横からポムが飛び出して来た。

「それはポムのポム!」
「ぬいぐるみがぬいぐるみを集めるんですか!?」
「ポムはぬいぐるみじゃないポムー!」
「うふふ、ポムちゃん可愛い」

 可愛い言い争いを始めるポムとあすな。年少者たちの微笑ましい様子に、りんねは思わず微笑んだ。そして、表情を変えると、暗雲が広がり始めた空を眺める。

「それにしても、さっきから凄い風ね。空も暗くなって、今にも雨が降りそう。来た時はいいお天気だったのに」

 りんねがそう零した瞬間、まるでタイミングを見計らったかのように辺りに不気味な閃光が走り、次いで耳をつんざくような音が轟いた。

「……きゃあ!」
「か、雷!?」

 突如として不穏な様子になった上空を見つめ、ゆららは近くの洗濯物を急いでまとめ始める。

「雨が降る前に、急いで残りの洗濯物を運びましょ!」

 一同は頷くと、先程とは打って変わった真剣な眼差しで、自分の持ち場へと戻っていった。