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第3話エピローグ

 時間は少し遡り、プリキュア達がスキホーダイを倒してからすぐの事。人気の無い道にワープし身を隠していたモーヴェは、誰にも見られていないことを確認すると、とぼとぼと歩き始めた。

「あーあ、デザストル様に何てお詫びしようかしら。厄介なプリキュアも増えたし、特にあのオトモダチがいけすかないわ。はぁ、どこかで絶望のレーヴジェムでも拾って来れば、埋め合わせができるんだけど」

 モーヴェはそう言って肩を落とす。すると、彼女のついたため息と、もう一つの息が重なった。慌てて顔を上げると、前方に、深紅の髪を靡かせ俯きながら歩いている一人の少女の姿を見つけた。

「はぁ、今日もりんねは留守でしたし、結局あの日から一言も話していません」

 少女は、夕闇まりあだった。モーヴェには事情は分からなかったが、何やら浮かない顔をしている。まだ僅かに残っているデザストルに貰った力を使って透視してみると、彼女の心が不安定に揺らいでいるのが見えた。

「あら? あの子のレーヴジェム、いい感じに絶望に染まりかけてるわね。ふふ、思わぬ収穫っ!」

 心の中でガッツポーズをしながらも、努めて平静に、モーヴェはまりあに近づいていく。

「……ねぇ貴女、そんなに落ち込んでどうしたの?」
「他人のお姉様には、関係の無いことですわ」

 そう言ってそっぽを向くまりあ。しかし、モーヴェは優しい顔のまま、彼女の前から動かなかった。

「もう、子どもは遠慮しちゃダメじゃない! 他人だからこそ、気兼ねなく話せることもあるでしょう? さぁ、お姉さんに話してご覧なさい」
「本当に良いのですか?」

 縋るような目が、こちらを見つめている。りんねの時は邪魔者のプリキュア達がいたせいで付け入る事は叶わなかったけれど、ここならば妨害されることもない。モーヴェはにっこりと人の良い笑みを浮かべると、そっと手を差し出した。

「ええ、全部受け止めるわ」