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第5話プロローグPart3

「はぁ、まあいいわ。何も知らない方が幸せよ。デザストル様、分かりました。今回はあたしがソンブルの指示を聞きましょう」

 モーヴェは暫く怪訝そうな顔でソンブルを見つめていたが、デザストルが予想していたよりもあっさりと彼の命令を引き受けた。

「はい。二人の活躍を、楽しみにしていますよ」

 デザストルは、相変わらず表情の読めない笑顔を向けると、踵を返しそっと部屋を出ていった。

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 一人になった途端、靴音がいやに刺々しく響く。デザストルは、完全に笑顔を切り離し、燃えたぎるように赤くなった瞳を廊下の先に向ける。しかしその目には、今この瞬間の出来事は何一つ写っていない。彼が思い出すのは、いつも不愉快な記憶ばかり。

「ソンブル君。私は正直に言って、君がとても憎らしいです。普通ならば、心の底にある絶望を引き出し人を惑わせるのに、ここまでの力を使うことはない。それなのに君は…… 」

 信頼だの、絆だの、友達だの。くだらない事ばかり吐き出してこちらを睨みつける目。デザストルには理解出来ない感情を向けられ、自身の研究を否定されたこと。それはどうしようもなく彼の神経を逆撫でて、怒りを沸き立たせる。

『家の為じゃない。オレは、自分の意思であいつに全てを捧げるって決めたんだ』

 頭の内側で反響した声に、デザストルはピタリと立ち止まる。ギリ、と唇を噛み締めて、彼は憎しみの籠った視線を地面に落とした。

「ああ、また思い出してしまった。敵に回すと厄介ですから、一生こちらに縛り付けておかなければ」