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第4話Part9

「あれは! 『アンフェール・グレーヌ』ポム! まりあ、逃げるポムー! 」

 モーヴェが持つものの正体に気がついたポムが、鞄から飛び出して叫ぶ。しかしその声は一歩遅く、モーヴェは既に、怪しく光る宝石をたかくかかげてしまっていた。

「あの子達の事は忘れなさい! 『アンフェール・グレーヌの主より命じる。絶望の力と結びし契約の元、我の前に姿を現せ!』」
「きゃぁあああ! 」
【スキホーダイ!】

 近距離で放たれた強い光に目が眩み、まりあは気を失ってその場に倒れた。動かない彼女を、現れた怪物──スキホーダイは、大きな黒い手で持ち上げる。

「まりあさん! まりあさん! しっかりして!」
「彼女は関係ないだろう!」
「まりあ先輩を離して!」

【イヤダネーベロベロバー】

 まつり達は口々に非難を浴びせるが、スキホーダイは涼しい顔。にやりと笑うと、挑発するように舌を出した。

「むっ、煽りスキル上達してませんか!?」
「最低ポムー!!」

 あすなとポムがスキホーダイに向かって頬を膨らませている。ただの作り物に、ムキになっちゃって。モーヴェは心の中でそう呟くと、心底可笑しそうに笑った。

「うふふ、この子は賢いし聞き分けがいいから、カプリシューズに連れ帰って、本当にあたしの妹にしてあげるわ」

 そう言うと、モーヴェとまりあを抱えたスキホーダイは、部屋の窓ガラスを割って外へと飛び出した。まつり達四人は、険しい顔で窓の外を見つめると、エスポワールパクトを手に取った。

「心の弱った人につけ込むだなんて、許せない」
「あなた達なんかに、まりあ先輩は絶対渡さないんだから!」