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第5話Part7

「そうだよ、レザン!」

 突如として聞こえた空気を揺るがす声に、レザンとゆららは驚いて振り返る。

「ま、まつり!?」
「いつからいたの?」

 二人同時に迫られて、まつりは少しの間あたふたとしながらも、問いかけられた質問の答えを必死に思い出す。

「んーと、まりあさんが変身できなかった理由が~の辺りから!」
「……良かった、ソンブルの事は聞かれていないみたい」
「え、何か言った?」
「いいえ、何でもないわ」

 独り言のように呟かれたゆららの声は、どことなく尖っているようにも感じられたが、気のせいだったのかもしれない。まつりは、お得意の能天気さで違和感を忘れると、本題だとばかりにレザンの方に向き直った。

「なら良いや。それよりレザン、ほんっと水くさいなぁ。火が怖いならそう言えばいいじゃん! どうしてもやらなきゃ行けない事なら、私が沢山励ましてあげるし、近くで応援してあげたのに」

 ちゃんと話してよね、と憤慨するまつりに、レザンのシリアスな調子はことごとく狂わされた。彼は視線を泳がせながら、バツが悪そうに頭を搔く。

「ご、ごめん。君たちに伝えるほどの事でも無いかと……」
「何で! 私達仲間でしょ? 私は、小さい事でも、困った事があったら教えて欲しいよ」

 それは、ごく当たり前のように飛び出した言葉。まつりにとっては、何気ない一言だったのかもしれない。けれど、それを聞いたレザンが、泣きそうな顔で息を飲んだのを、ゆららは見逃さなかった。

「……仲間、か。そうだね、まつりの言う通りだ、ありがとう」

 はにかみながら微笑んだレザンは、もう普段の王子様に戻っていた。物語なら、このまま美しく一幕が閉じる頃だろう。けれど、それを阻止する刺客が二人、既にまつりの背後に迫っていた。

「あー! まつり、こんなところでサボってるポム!」
「あすな達を差し置いて1人だけ休憩ですか! 許せませんッ!」

 甲高い声と共に登場したのは、ホウキと雑巾を手にしたあすなとポムだった。二人のメラメラと燃える熱い視線は、まつりただ一人に注がれていた。

「わわっ! 2人とも!? 違うって、これには事情が~! わぁあ、引っ張らないでよ~!! 」

 誤解をとこうと慌てて弁明を試みるまつりだったが、その甲斐虚しく、彼女は瞬く間に階下へと引きずり下ろされてしまった。残されたゆららとレザンは、あっけに取られたような表情で顔を見合わせた後、どちらからともなく吹き出した。

「全く、まつりの周りはいつも騒がしいわね」
「ふふ、本当にそうだね」