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第5話Part8

 テーブルの上には、すっかり空になった深皿とスプーンが綺麗に並べられ置かれている。食事を摂ったことでまた幾分か顔色の良くなったレザンは、りんねとまりあに向かってにっこりと微笑んだ。

「ご馳走様。りんねちゃん、まりあさん、とっても美味しかった。ありがとう」
「これくらい、なんて事無いわ。早く元気になってね、レザンくん」
「わたくしがプリキュアになれる方法も分かった事ですし、とりあえずはひと段落ですわね」

 そう言ってほっとしたような表情を見せるまりあの横で、りんねは歯痒そうに押し溜めていた気持ちを解放させるように、キラキラと目を輝かせた。

「それにしても、レザンくんのお洋服凄く可愛いわね~!」
「えっ、あぁ、これは……」

 そこで初めて、一同はレザンの服装に目を向けた。今日の彼はいつも休日に見るような無難な服ではなく、光沢のある生地にふわふわとしたレース飾りが沢山ついた、人形のような服を着ていた。確かに可愛い、と息を呑む少女たちに、ポムは張り切って口を開く。

「王国では定番の、男の子のお洋服ポム~! でも、地球では女の子の服みたいって言われる事があるポム。だから、レザンは外に出る時は地球の服を着るようにしてるポム」
「そうなのね。でも、その服もすごく似合ってる……ふわふわしててしなやかで、こうしてみると本当に王子様に見えるわ! 素敵~!」

 普段の落ち着きはどこへやら、きゃあっと年相応の少女のような反応を見せたりんねに、あすなはぎょっとして目を瞬かせた。

「り、りんね先輩? 急に雰囲気が変わったような……」
「りんねはフリフリした可愛い物が好きなのですよ。可愛い物を見ると、あのように楽しそうにする事が多いですわ」

 すかさずそう解説に入ったのはまりあ。どことなくりんねを自慢するような声色であるのは、気のせいだろうか。

「そうだったんだー! 意外な一面」
「そうでしょう? りんねの可愛さはわたくしがどんどん広めて差し上げますわ!」

 やはりまりあは得意げだ。まつりの言葉に食い気味に答え、とん、と胸を叩いた彼女を見て、あすなはまた目を白黒させる。

「りんね先輩の事になると、まりあ先輩のテンションも高くなりますよねー」
「そ、そうかしら?」

 どうやら自覚は無かったようだ。途端にしおらしく頬を染めるまりあを見て、ポムは満面の笑みを浮かべた。

「りんねもまりあも、面白いポム!」