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第2話Part11
「ふふ、わたくし、生徒会長ですので、各部活動の事もよく存じております」
話し始めたまりあは、あすなの方をちらりと見て、笑みを深めた。その微笑み方は、先程までの平面的なものとは明らかに異なっており、仲間意識を感じさせるような、あたたかなものだった。
「そちらにいらっしゃる煌希さんは、ダンス部の中でも人一倍努力していらっしゃるとお聞きしていますし、実際に何回も自主練習する姿を拝見しております。当然、選抜メンバーにも選ばれる実力なのでしょう」
突然まりあに褒められ、あすなは嬉しさで頬を赤く染めた。その様子をしっかりと見つめた後、まりあは女子生徒達に顔を向けた。その時にはもう、まりあの顔から笑顔は消えていた。
「……ですが、反対に貴女達お二人は、日頃から部活をサボってばかり。練習もろくにせず、いつも喋ってばかりいるのだとか」
真実を告げられた二人は、ぐっと言葉を詰まらせた。図星なのだろう、先程までの自信に溢れた表情は消え、二人は明らかに動揺していた。
「わたくしがメンバーを選ぶ立場だったとしても、この結果にするよりほか、ありませんよね?」
言葉を失った二人に、まりあは念を押すようにゆっくりと語りかける。静かな物言いの中にも、確かな怒りを感じ取った二人は、その場から離れようと慌てて足を動かした。
「っ……!もういいわ」
「なんか気分悪くなったし。行こっ!」
「あ、いっちゃった……」
言葉をかける間もなくパタパタと駆け足で去っていく二人を見て、まつりは唖然とした表情で呟く。
二人の姿が見えなくなると、ゆららはまりあの方に近づき、恐る恐る話しかけた。
「あの、生徒会長、ありがとうございました」
「いいえ。わたくしも、もっと早く来ていれば良かったのだけど……。貴女達二人、とても素晴らしい人格をお持ちね。」
まりあは、三人を交互に見つめると、満足気に頷いた。その顔を見て、まつりは『厳しそうな生徒会長』という彼女の認識を改めた。
「い、いえ、私は、あすなちゃんが頑張ってるのは本当だから、それを伝えたいと思っただけで!」
「私もそうです。それに、生徒会長が来てくださらなかったら言い返すことができなかったし……」
知らなかったまりあの一面に驚きつつも、まつりとゆららは大袈裟だと照れたように手を振る。それを傍で見ていたあすなは、二人に向かってぺこりと頭を下げた。