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第6話Part2

 席に座ったまま、みづきは澄んだ瞳でこちらを見上げてくる。首を傾げる小さな動作ひとつ取っても、彼女が好意的であることは見て取れた。

「素敵な名前ね。昔からの知り合いみたいに、まつり、ゆらら、って呼んでもいいかしら?」
「もちろんだよ! 仲良くしようね!」
「学校のことで分からないことがあったら、何でも聞いて」

そう言ったところで、ゆららははたと言葉を途切らせた。先程まで気づかなかったが、こうしてみづきと面と向かって接していると、何だか妙に懐かしいような、気味の悪い既視感に襲われたのだ。

「……ところで、あなた、どこかで一度会ったことない?」
「……!」
「え? そうなの?」

みづきの顔が、一瞬だけ凍りついた。しかし、それを誰かが認知する前に、まつりの大きな声が辺りに響く。そして、その時にはもう、みづきは元通りの涼し気な表情に戻っていた。

「いいえ、ゆららとは初対面よ。人違いじゃないかしら?」
「そう、よね。ごめんなさい、変なことを聞いて。なんだか初めて会った気がしなかったの」
「大丈夫よ。それなら私たち、すぐに仲良くなれそうね」

みづきは、はしゃいだようにそう言いながら咄嗟にゆららの手を握った。そうした事で、徐々にほのぼのとした空気が舞い戻ってくる。

「ねえ、みづきちゃん、もし良かったら、これからあすなたちが、学校を案内してあげる!」
「虹の花学園にはいい所がいっぱいあるんだよ~!」
「ほんと? 嬉しい。お願いしたいわ」
「よーし、それじゃあ早速しゅっぱ……」

みづきのムードにのせられたまつりは、そのまま教室を出ていこうとする。が、しかし、ゆららは眉間に皺を寄せてそれを制した。

「その前に、掃除を終わらせないと行けないでしょ。私たち、ゴミ捨てに行った帰りだってこと、忘れたの?」
「あ、そうだった~!」

ゆららの言葉を聞くや否や、まつりは頭を抱えて大袈裟に声を上げた。案の定、すっかり忘れていたようだ。