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第4話Part15

 モーヴェはひとしきり笑うと、まりあに向かって怪しげに目を細めた。

「プリキュアの誕生は食い止められたから、今回はこれで勘弁してあげる。……そうそう、まりあ。不安になったらあたしの所へ来なさい。いつでも待っているわ」

 そう言い終えると、モーヴェは空の中に消えていった。残されたまりあは、しばらくぼんやりと空中を眺めていたが、起き上がろうとしているりんねが目に入ると、正気に戻って駆け寄った。

「りんね!」
「まりあさん……」
「ごめんなさい、わたくし、あなたを守れなかった……!」

 まりあの頬に、ぽたぽたと涙が伝う。それは、体にあたる陽だまりや、背を包む柔らかい芝生のあたたかさと良く似ていた。りんねも目に涙を滲ませると、まりあの顔に手を伸ばした。

「良いの、私のために、動いてくれてありがとう。私、私まりあさんともう一度、きちんと友達になりたい。駄目、かな」
「駄目なものですか! わたくしの方こそ、少しでもあなた達を疑ってしまって、ごめんなさい。わたくしもりんねと友達になりたい」

 ずっと聞きたかった言葉。通いそうで通えなかった心が、今この時、確かに繋がった。

「本当? 本当に……?」
「ええ、もちろん」
「まりあちゃん! 私嬉しい! 」
「わたくしも、わたくしも嬉しいわ。きっと、わたくしの弱い心がいけなかったの」

 自嘲気味にそう言うと、まりあは後ろで見守っていたまつり達と目を合わせた。

「……桜宮さん、汐風さん、煌希さん、和泉くん。わたくしを助けてくれてありがとう。あなた達がいなければ、きっと飲み込まれてしまっていた」

 どこか吹っ切れた様子のまりあを見て、まつりは屈託のない笑顔を向ける。きっともう、この人は大丈夫だ。次はきっと、五人で力を合わせられるはず。

「先輩が連れていかれなくて良かったです。りんねちゃんも、良かったね!」
「うん、皆、本当にありがとう」

 涙を吹いて答えたりんねの顔は、今まで見たどんな笑顔よりも、輝いて見えた。