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第6話Part4

 濃い橙色に染まった長い陽の手が、静まり返った廊下に伸びている。みづきことリーラは、コツコツと小さな音を立てながらその中を歩いていた。
 と、その時、前方にある教室の扉が、まるでリーラの登場を見計らっていたかのように開いた。案の定、そこから現れたのは仲間のシャグランだ。

「リーラ、こっちだ」
「プリキュアたち上手く巻けた? アイツらの行動力マジパネェ~!ウケる!」

慎重に辺りを見回しながら手を降るシャグランの後ろから、彼より二回りほど小さな少女がひょこっと顔を覗かせる。彼女──ラージュは、シャグランとは打って変わって能天気な声でからからと笑った。その口調に、リーラは少しだけ面白くなさそうに眉をあげたが、すぐに表情を戻すと腕を組んで口を開く。

「何とか逃げてきたわよ。あの子たち、揃いも揃ってお人好しよね」
「王国の使者達からは身を隠せたか? 貴殿はあの二人と親しい間柄だったのだろう?」
「それも問題ないわ。出会わないように上手くやるつもり」
「ふーん、そんじゃまあ、とりま安心?」
「そうね、今のところは」

手短に報告を終えた後、リーラはシャグランに向かって声のトーンを落とす。明らかに不機嫌な様子で、リーラは自分よりうんと背の高い青年を睨みつけた。

「ところでシャグラン、これからは私の前であまりレザンたちの話をしないでくれる? 気分が悪いわ」
「そ、それは済まなかった。以後気をつける」
「年下の女子から睨まれて怯えてるの、おもしれ~!」

あまりの剣幕に、シャグランは一瞬びくりと肩を震わせた。その様子を間近で見ていたラージュはというと、心底可笑しげに手を叩いている。
 やがて、ラージュの笑いの発作がある程度収まると、彼女は人が変わったかの如くのんびりと立ち上がり、「んじゃ、me達そろそろ行くわ。部活だりぃ~」と言い残すと、シャグランを引っ張って教室から出ていってしまった。