第4話Part12
スキホーダイが勢いよく振り返ると、そこにはにやにやと可笑しそうに笑うフルール、ラメール、ルシエルの姿があった。
「ぷぷ、もしかしてノロマ過ぎて反応出来ないんですか~? 」
先程の仕返しをするかの如く、ルシエルは口元に手を当てて、大袈裟に煽ってみせる。スキホーダイは悔しそうに足を踏み鳴らすと、ヴェールには目もくれず、三人の方に向かって突進して行った。
【オソクナイモン! ハヤク ウゴケルモンー!!!】
「まだまだ遅いですよ! プリキュア! スターダストポップ! 」
【ハハハ、ゼンゼンアタラナーイ! 】
口ほどにも無いなと言わんばかり、スキホーダイは大きな口を歪めた。だが、ルシエルはそんな怪物を気にもとめず、スキホーダイの後ろに向かって叫んだ。
「それは囮です! ヴェール! 」
「ええ! 」
突如後ろから聞こえてきた声に、スキホーダイが慌てて振り返ろうとする。だが、その僅かな間に、背後から追ってきていたヴェールは、まりあを抱えて通り過ぎて行った。
【…ウバワレタ…? 】
ぽかーんとした顔でヴェールの動きに気を取られるスキホーダイ。油断している怪物に向かって、フルールとラメールが攻撃を仕掛けた。
「よそ見してたらやられちゃうわよ! プリキュア! ジュエリーウェーブ! 」
「プリキュア! フローラルアタック!」
【ミナサマ、ゴキゲンヨウ~】
大きなスキホーダイは、跡形も無く浄化され、青空と同化して消えていった。スキホーダイの欠片を見送りながら、フルールは勢いのままにガッツポーズをする。
「やったー! 倒せたぞ~!」
「倒したのね。良かった」
「ヴェール、早くこっちへ! 」
「まりあを安全な所へ隠すポム! 」
まりあを取り戻したヴェールは、レザンとポムに誘導され、低木の影になるところにまりあを横たわらせた。地面に体が触れた感覚で、まりあがゆっくりと目を覚ます。
「うう、わたくしは何を……あら、和泉くん? 何だか不思議なぬいぐるみを持っているのね。それから、あなたは……誰? 」
まりあの目に映ったのは、不思議な格好をした知らない少女。けれどその眼差しは何処か懐かしく、初めて見るはずなのにずっと前から知っているようなあたたかさを呼び起こした。
「まりあさん、私は……」
まりあにならば、正体を言っても良いだろうか。ちらりとレザンを見ると、レザンは優しい顔で頷いてくれた。ヴェールはホッとして、口を開きかける。しかし……
「ああ! 忌々しいプリキュアめ……! せっかく上手くいくところだったのに!」
モーヴェの声と共に、攻撃の赤い光が、ヴェールの背後目掛けて飛んできた。